元カノから妻の“知られざる過去”を聞かされ、何かが変わった…そして、50歳夫が思ってしまったこと
酔いつぶれた将太さんを送って行った夜に…
子どもたちが小さいとき、和宣さんはどちらかといえば仕事が忙しくなかったから、子育ては率先してやってきた。今になって思えば、茉希さんに任せなくてよかったのかもしれない。
「茉希は母親の再婚相手が大嫌いだったみたい。だから継父と何かあったんじゃないかと地元で噂されたこともあったらしいです。僕はちっとも知らなかったけど。朋美は『結婚するって聞いたとき、和宣は全部知った上だと思ってた。そこまで何も知らなかったなんて』と絶句していました。過去のことはしかたがないけどと思いながらも、目の前の朋美が気になってたまらなくなっていった。『やっぱり朋美と結婚すればよかった。どうして待っていてくれなかったんだ』とヤケになって言ったら、『あなたが私を捨てたんでしょう』って。そんなつもりはない、あのまま遠距離恋愛ができると思ってたと言っているうちに、なんだか泣けてきてしまって。気づいたら朋美が僕の頭を抱きしめてくれていました」
ふたりの顔が近づき、唇が重なった。ソファの将太さんはグーグー高いびきだ。彼女の胸をまさぐったとき、「ダメよ、ここじゃダメ」と朋美さんがあえぎながら言った。朋美さんは物置になっているような部屋に彼を誘い、ふたりはそこで慌ただしく結ばれた。
「このときを30年近く待っていたんだと思うと、お互いを自分のものにしようと必死でしたね、ふたりとも。でもその後、私たちが最初に結ばれたのが納戸だなんて……と朋美はクスクス笑うんです。とんでもないことになってしまったのに、彼女には悲壮感がなかった。やはり朋美はいい女だなと思いました。『何があっても口をすべらせないでよ』と朋美は言って、僕に手伝わせてリビングの将太を寝室に運びました」
そして彼は「将太によろしく」と未明に帰宅した。すっかり酔いは冷めていたから、家の近くのコンビニ前でタクシーを降り、缶ビールを買って一気に飲んだ。酔いが再び戻ってきたころ自宅へたどりついた。
「冷蔵庫から水を出して飲んでいると茉希が起きてきたんです。『ごめん、将太と飲んで遅くなった』と言うと、『仲がいいわね、あなたと朋美さん』という言葉が返ってきた。朋美とは何でもない、将太とふたりで外で飲んだと言ったのに、茉希は何も答えなかった。当時、サッカー部のキャプテンの僕とマネージャーの朋美とのことは校内では知られていたから、茉希にとっては僕が将太や朋美と再会して親しくしているだけで不快だったんだと思う」
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