元カノから妻の“知られざる過去”を聞かされ、何かが変わった…そして、50歳夫が思ってしまったこと
語られた茉希さんの過去
それからは、仕事が終わってから将太さんと会うことが増えた。あるとき、ふたりはかなり酔って将太さんの家に行った。
「もう電車がなくなっちゃったんですよ。タクシーで帰ったんですが、『うちのほうが近いし、明日は休みだから泊まっていけよ。飲み直そう』と将太がうるさくて。夜中に申し訳ないと思ったけど、将太はぐでんぐでんだし、しかたなく送っていきました」
朋美さんが笑顔で迎えてくれた。こんなに酔った将太は初めて。よほど和宣に会えてうれしかったんだと思うと言った。
「将太はリビングのソファで横になってしまった。いいわ、放っておいてと朋美は笑って、少し飲み直そうと僕らの地元で作られている日本酒を出してきた。『私はお酒に弱いんだけどね』と一口で頬をピンクに染めた朋美は、やはりきれいでした。どうなの、茉希とはうまくいってるのと聞かれて、酔っていたせいもあるし朋美に甘えたかったせいもあったのか、『うまくいくわけないよ』と愚痴ったんです」
すると朋美さんの目がキラリと光った。でもエライよね、和宣はと意味深な発言。何がと聞くと、よく茉希と結婚したなと思って、とまた意味ありげに言う。
「何か知ってるのかと言ったら、『世の中、知らないほうがいいこともあると思う』って。だったら言うなよという話ですが、そのときは酔っているから、とにかく何か知っていることがあるなら聞かせてほしいと頼んだんです。そうしたら茉希は東京で『愛人生活』をしていた、と。高校を出てすぐに上京、最初はクラブで働いていたけど、その後は愛人として暮らしていたんだそうです。これは茉希と親しかった共通の友人に聞いたから確かだと。バブルの最後にひっかかっている世代だから、茉希は都心の一等地にマンションを買ってもらったらしいです。バブル崩壊とともにそのマンションを売って、僕と出会ったころはその貯金で生活していたみたい。だから過去を語りたがらなかったんですね。いろいろなことが一致して、かえってすっきりしましたが」
一時は結婚してきちんと生活しようと思ったのだろうが、「普通の生活」は茉希さんにとっては窮屈だったのかもしれない。子どもに対して過干渉ではないから、のびのびと育てようとしているのかと思っていたが、実はあまり関心がない可能性のほうが高そうだ。
[2/4ページ]