必要な総額は8兆円? 財源論は先送りに… 「異次元の少子化対策」は国家的詐欺か
特に波紋を呼んだ「給食費の無償化」
そこで示された主な政策を駈け足で見ていくと、
・児童手当の所得制限を撤廃し、支給期間を現状の中学卒業までから高校卒業までに延長する
・出産費用の保険適用の導入を将来的に検討する
・両親ともに育休を取得した際に一定期間の給付率を現行の手取り8割相当から10割相当に引き上げ
・学校給食費無償化へ課題を整理する
そのほかに、給付型奨学金の対象を一部拡大、多子世帯への住宅ローン金利の負担軽減、子育て世帯の公営住宅への優先的な入居なども列挙されている。
中でも特に波紋を呼んだのが、「給食費の無償化」だった。提唱者は自民党最高幹部である茂木敏充幹事長(67)。3月20日、福島県の認定こども園を視察後、茂木氏は「家庭の事情に関係なく支援をしていく観点から、小中学校の給食費無償化を実現したい」とぶち上げたのだった。
「官邸は完全に寝耳に水の話でした」
と困惑するのは、さる官邸関係者である。
「茂木さんは児童手当の所得制限撤廃も最初に言及したのですが、その際も官邸への根回しは不十分でひんしゅくを買っていました」
「ただでメシ食えるなんていいのかよ」
実際、給食費無償化には総理側近や官邸幹部から不満の声が続出。実現には年間4600億円ほどの財源が必要だとされていて、例えば、さる総理側近は周囲に、
「学校に行けばただでメシ食えるなんていいのかよ」
そう語り、財源に話が及ぶと、
「簡単に言うなよ! アホみたいな政策出しやがって」
と怒りをぶちまけたという。先の関係者が続ける。
「横浜市などは中学校の給食を全面的に実施しておらず、全国的に無償化すると、家計の負担軽減に地域差が出てしまう。茂木さんはそうした問題や財源をどうするかについて全く考えておらず、文科省や財務省もほとほと困り果てています」
さらに物議を醸したのは、自民党の提言を党内ですり合わせていないことだ。
本来、自民党の政策責任者は政調会長である萩生田光一氏(59)。が、今般の提言は茂木氏が本部長を務める党の「『こども・若者』輝く未来創造本部」でまとめられ、萩生田氏はないがしろにされた格好だ。
実は先の給食費無償化ももともとは政調の案だったとされる。それを嗅ぎつけた茂木氏に近い人物から耳打ちされ、幹事長は自らの腹案として表明したという。萩生田氏にすれば面白いはずがない。
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