ふるさと納税「流出超過95億円」で全国トップの川崎市 理由は「名物」がないから?
2008年から始まったふるさと納税の寄附金総額は1兆円に迫る勢いである。
なかでもカニ、ホタテなどの豪華な返礼品をそろえる北海道紋別市は約153億円(2021年度)で堂々の1位、笑いが止まらないはずだ。一方、頭を抱えているのが入ってくる寄附金(受入額)より他の自治体への寄附金(控除額)が多い「流出超過」の自治体だ。こちらの全国トップは神奈川県川崎市。なんと流出超過額は95億円にのぼる。
「ふるさと納税の流出超過は他にも東京都世田谷区、港区など首都圏で起きている現象です。川崎市は地方交付税が交付されない“不交付団体”(裕福な自治体の意)でもあり、国からの補填もない。それでも、並みいる大都市を抑えて流出超過額でトップになってしまったのは、返礼品に特色が出せないというハンデがあるからでしょう」(総務省担当記者)
「流出過多は大変な負担になっている」
たしかに、ふるさと納税のサイトを見ると川崎市の返礼品は市内にある「コストコ」のクーポンや、工場のある花王の洗剤、イヤホンなど、ふるさと感は一見、ゼロである。
京浜工業地帯を抱えているからやむなくそうなるのかもしれない。では、市の財政への打撃やいかに。
「川崎は財政が裕福だからびくともしないだろうと思われるかもしれませんが、とんでもありません」
とは川崎市財政局財政部資金課の担当者だ。
「さすがに予算が足りなくなって市政が滞ることはありませんが、ふるさと納税の流出超過は大変な負担になっています。そのため、赤字分は市債の償還のために積み立てている“減債基金”から借りている状態です。総務省に対してはふるさと納税制度に制限を設けるなど、申し入れているところなのです」
やはり紋別市のような魅力的な返礼品が足りていないのだろうか、と聞くと、
「いいえ、カニやホタテをもらったとしても、その土地(ふるさと)のことを知れるとは限りません。その点、川崎のイヤホンなどは地元企業を知ってもらうきっかけになると思っています。こちらのほうがふるさと納税制度の本来の趣旨に合っていると思いますよ」(同)