滋賀県民の常識「琵琶湖は動いている」は本当か 専門家が指摘する“縮小”する日本最大の湖の姿と「100万年後」の驚きの結末
「日本で一番地味な県」とも囁かれる滋賀県がにわかに注目を集めている。キッカケとなったのは、同県を舞台とした青春小説『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社刊)が話題となっていることだが、それに伴い“滋賀県最大のミステリー”にも視線が注がれることに……。
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【写真】ひと目でわかる 「動く」「沈む」「縮む」琵琶湖の“証拠”資料
滋賀県と聞いて、多くの人がまず頭に思い浮かべるのは「琵琶湖」だろう。日本最大の淡水湖で面積は約670平方キロメートル、水深は最大で約104メートル。滋賀県のほぼ中央に位置し、貯水量は日本で利用可能な淡水の約3分の1に当たる275億トンを誇る。
琵琶湖にたたえられた水は、滋賀県だけでなく、京都や大阪府、兵庫県など近畿1450万人の生活用水としても利用され、関西地方の「巨大な水がめ」として多くの人々の生活を支えている。
実は滋賀県民なら誰もが知る“常識”とされるのが「琵琶湖移動」説だ。琵琶湖は日々、わずかずつだが「北上」しており、将来的には日本海へと達して“消失”するというのである。
他県の人間が聞けば耳を疑う話だが、滋賀県民は「琵琶湖は動いている」ことに疑問は抱いていないとか。実際、専門家に話を聞くと「動く琵琶湖」には科学的な根拠があるという。
ルーツは「伊賀の小さな湖」
琵琶湖の環境や遺跡に関する研究を長年行ってきた立命館大学・総合科学技術研究機構(琵琶湖・環境イノベーション研究センター)客員教授である熊谷道夫氏が話す。
「琵琶湖のルーツは約420万年前、現在の三重県伊賀市付近にできた小さな湖とされます。当時の琵琶湖(古琵琶湖)にはワニがいたなどの研究報告もあり、亜熱帯気候に覆われていたと考えられている。その後、約300万年前に地球の気温が低下していく過程で、日本列島が乗ったユーラシアプレートの下に潜り込む、フィリピン海プレートの運動方向が変化。それまで同プレートが動く方向は“南からほぼ真北”でしたが、“南から北西”へとズレました。これにより、現在の姿へとつながる琵琶湖の移動が始まったと見られています」
フィリピン海プレートとユーラシアプレートという、南北からのプレート同士のせめぎ合いによって“南側が隆起、北側が沈み込む”原理で、琵琶湖は200万年以上をかけてゆっくりと「北上」したとされる。
「日本列島全体はユーラシアプレートの力などによって南東方向に年間2センチ程度移動していますが、滋賀県の真下に潜り込む形のフィリピン海プレートの影響で、琵琶湖の南北で異なる地殻変動があらわれたと考えられている。琵琶湖周辺に走る多くの断層も移動の過程で形成されたと見られます」(熊谷氏)
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