ハイカルチャーを志す「きつね」のネタ、実はお笑いの本流 ザ・ドリフターズにも通じる魅力を読み解くと

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 お笑いの世界では、歌や音楽を取り入れたネタは「リズムネタ」「歌ネタ」などと言われる。リズムネタも立派なネタには違いないのだが、わかりやすくて子供にもウケやすいことから、何かとなめられたり、低く見られたりすることも多い。

 そんなリズムネタ軽視の風潮に屈することなく、新しい形のリズムネタで世に出てきたのが、大津広次と淡路幸誠のお笑いコンビ・きつねである。そのルーツは、彼らが学生時代に組んでいた5人組のコントユニットである。そこから1人ずつメンバーが抜けていき、現在のコンビになった。

 コンビ名の由来はフランスのファッションブランド「メゾン キツネ」である。そこでは「キツネ」という音楽レーベルもあり、自分たちもそんなハイカルチャーになりたいという思いから名付けられた。

 実際、彼らはファッションや音楽などにも関心が高く、さまざまなカルチャーの要素をネタに取り入れてきた。

有吉の壁で話題に

 きつねがブレークするきっかけになったのは、「歌謡漫才」と呼ばれるネタをテレビで披露したことだった。レトロな衣装に身を包んだ2人が、なぜかサンプラーを駆使して効果音やダンスミュージックを流して観客を盛り上げる、というもの。昭和歌謡の世界観でEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)を流すという発想が斬新だった。

 その後、若手芸人の登竜門的な存在である「有吉の壁」に出演するようになり、そこで演じた「KOUGU維新」というコントが話題を呼んだ。大津の役名は「プラスドライバ」、淡路は「平やっとこ」。彼らがほかの芸人と共に命が宿った工具として2.5次元ミュージカル風の本気のパフォーマンスを披露したところ、独自の世界観に魅了される人が急増した。

 2.5次元のファンから流れてくる人も出てきて、KOUGU維新というプロジェクトは独り歩きを始めた。KOUGU維新としてイベントが行われたり、グッズが作られたのに加えて、楽曲も配信でリリースされ、音楽番組にも出演を果たした。

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