【福島市5人死傷事故】97歳被告に執行猶予付き有罪判決で物議 収監された池袋事故・飯塚被告との違い
判決批判は当然
4月12日、福島地裁の三浦隆昭裁判長は、検察側の禁錮3年6カ月の求刑に対し、禁錮3年、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。
判決内容が報道されると、ネット上では多数の異論が投稿された。Twitterでは以下のような具合だ。
《人殺しといて執行猶予付き? これ殺された女性の家族、納得いかんやろ?》
《運転ミスで人殺しても執行猶予五年つくのなら免許返納しなくても……なんて不謹慎な老人は居ないか?!》
《人の命を奪っておいて執行猶予。裁判官に命の重さは理解出来てない様にしか思えない》
こうした投稿を“ネット私刑”と受け止める人もいるかもしれない。だが、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「今回の判決に多数の人が違和感を覚えているのは当然だと思います」と語る。
「普通なら3年の執行猶予を5年にするなど、確かに裁判長も様々なことを考慮して判決を下したのでしょう。しかしながら、この事故は健康に問題のない運転手が、過失を原因として起こしたものではありません。もう車の運転は危険だと思われていた超高齢者による死亡事故です。そもそも運転するのが大問題だったわけで、一般的な交通事故とは異なることに注意する必要があります」
池袋事故との違い
判決でも、波汐被告は正常な運転ができる状態ではなかったと認定されている。
《97歳のいわゆる超高齢者で、事故前から自宅車庫に駐車する際、車と電柱を接触させるなど、判断能力や運動能力に衰えがあった》(前掲・テレビユー福島)
さらに、車を運転しなくともタクシーなどを使って日常生活が送れたとも指摘している。
《タクシーを利用することが金銭的に困難だったとは言い難く、運転を控えるべきだった》(同前)
「運転能力に問題があったと事実認定しているのですから、実刑判決を下すべきでした。しかも遺族の男性は法廷で強い憤りを陳述しています。処罰感情は強かったでしょう。もし酒酔い運転で5人の死傷者が出たら、実刑判決の可能性は高い。波汐被告が起こした事故も根本的には同じはずです」(同・若狭氏)
2019年4月、東京・池袋で母子2人が死亡、9人が重軽傷を負った自動車事故を起こした飯塚幸三元被告(当時87歳)は、21年9月に禁錮5年の実刑判決が下って収監された。担当記者が言う。
「ネット上では、池袋と福島の事故を比較し、判決の違いにも多くの意見が投稿されています。その中で目立つのは、池袋の事故は被告が無罪を主張したが、福島の事故は罪を全面的に認めたことに注目するものです。『池袋は裁判官の心証が悪く、福島は心証が良かったのだろう』という指摘は少なくありません」
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