炎上CM「若者よ、選挙に行くな!」に今度は盗作疑惑 制作した「たかまつなな」はどう答えたか

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「日本語版を作る」という意図

 例えば、坂口安吾(1906~1955)の小説『桜の森の満開の下』をオマージュした小説を書いて発表しても、剽窃や盗作と批判される可能性は低いかもしれない。

 しかし、同じ安吾の著作でも、戦後日本の荒廃を通して人間本来の姿を描いたとされる『堕落論』の一部を、あたかも自分が書いたかのようにエッセイやコラム、論文として発表したら、盗用と見なされる可能性は高い。

 たかまつ氏に取材を申し込み、まずはCMを作成するまでの経緯を聞いた。

「記憶は曖昧ですが、2018年に公開されたアメリカ版のCMをリアルタイムで見たというわけではなく、2019年に行われた参院選で、どんな啓発CMを作るか考える中で様々な資料を集めていたところ、このCMを見て衝撃を受けたという流れだと思います」

 当時、たかまつ氏やスタッフは企画を検討しては、できるものから実行するという作業を繰り返していた。たたき台となったアイディアは100個とか200個というレベルだったという。

「その中でも『Dear young people, "Don't Vote"』のCMは強い印象に残りました。英語に堪能な知人に協力をお願いし、内容を翻訳してもらいました。スタッフとも話し合い、このCMの日本語版を作ろうということで一致しました。『内容が似すぎている』と批判されましたが、最初から原作に敬意を示し、オマージュやパロディという視点から『日本語版のCMを作ろう』と考えていましたので、今でも完成したCMについては法的な観点も含め、何の問題もないと認識しています」

不眠に悩む日々

 CMそのものに問題はないというスタンスだが、反省点もあるという。

「ネット上などで指摘を受け、アメリカ版のCMを制作した会社には許諾を求めるメールを送りました。今のところ返信は来ていませんが、誠実に対応したいと思っていますし、私たちがCMを作る際に許諾を求めるべきだったとも考えています。さらに、元ネタの存在を隠したことは一度もありませんが、もっと分かりやすく明示すべきだったかもしれません。例えば、YouTubeの概要欄にアメリカ版CMのタイトルとリンクを記載するだけでも、皆さんの受け止めは違ったと思います」

 たかまつ氏のCMが炎上したのは事実だが、広く拡散し、話題を集めたことも間違いない。しかし、もう積極的な評価はできないという。

「CMに対する賛否は分かれるだろうなと、ある程度は事前に予想していました。しかし、まるで私が高齢者に対する差別主義者であるかのようなレッテルを貼られるとは思っても見ませんでしたし、そのことには強いショックを受けました。日本の商業広告は現在、数件でもクレームが来ると問題になってしまい、表現が萎縮しています。私はメッセージ性を重視して『若者よ、選挙に行くな』というCMを作りましたが、自分の想いとは関係のない点で炎上してしまいました。精神的なショックは少なくなく、今も不眠に悩まされるなどしています」

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