岡田監督“非情采配”に擁護派多数のワケ 山井とも朗希とも違う「完全試合」放棄で背負った“十字架”とは

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村上に全幅の信頼を置いていない岡田監督

 この場面、続投させた方が「監督としてはむしろ楽」と前出の元捕手はみる。交代の方がセオリーから外れ、批判を受けかねないからだ。事実、阪神は八回に救援した石井がいきなり岡本和真に同点ソロを浴び、延長戦で辛くも勝つ形になった。

「岡田監督は実績が乏しい村上に全幅の信頼を置けなかったのだろう。佐々木朗希なら、そして3点リードなら続投させていたとの言葉によく表れていた。それでも、投手や捕手出身の監督なら交代しないケースだろうが、岡田監督は内野手出身だから。自分があと単打1本でサイクル安打という打席で代打を送られたら、どう思うかということ」

さらに元捕手はこう持論を続けた。

「村上には一生に一度のチャンスかもしれない。プロの目では誰でも分かることだが、調子が落ちていたから打たれていた可能性もある。それでも、いい当たりが野手の正面を突くことなどはある。(完全試合ペースの投球の)成否が確かめられなかったことは残念と言うしかない。プロは勝敗が最優先だが、ファンあってのものでもある。ショーを見せるという意味でも続投させてほしかった」

 日本球界の“完全未遂”と言えば、2試合連続での達成が目前だった昨年の佐々木、そして07年の日本シリーズにおける中日の山井大介が引き合いに出される。しかし、元捕手は、村上のケースはともに八回まで完全試合だった過去の二つのケースと明確に違うという。

関西マスコミは“神采配”から手のひら返しとはいかない

「佐々木の場合は両チーム無得点で、あと1回抑えれば完全試合だったわけではない。また、入団時から球数を管理し、故障に細心の注意を払っていた球団ぐるみの取り組みも背景にあった」

 中日に至っては、53年ぶりの日本一が懸かった試合だった。しかも、山井は途中から指のマメがつぶれて出血し、自ら抑えの岩瀬仁紀への継投を望んだのだった。

「阪神はたとえ村上が打たれたとしても大きな糧になった。たとえチームが逆転負けしたとしても、それほど大きなダメージだっただろうか。投手陣が強力で大崩れはなさそうで、巻き返すには十分な試合数が残されている。最終的に勝ったからよかったようなものの、負けていればどうなっていたことか」(元捕手)

 監督の采配に厳しい目を向ける関西マスコミは、おおむね理解を示すような論調だった。

「阪神担当はDeNAとの開幕3 連戦でずばずば的中した岡田監督のベンチワークを“神采配”などともてはやした。すぐに手のひら返しとはいかない。岡田監督には“優勝請負人”としての期待感がある。昨季、矢野(燿大)前監督が同じことをしていれば、(キャンプ前に退任表明したこととの言行不一致などで)猛批判したのだろう」(遊軍記者)

 阪神は翌13日も巨人に勝った。今季最初の伝統の一戦を2勝1敗と勝ち越し、岡田監督の“非情采配”はひとまず説得力を帯びたのだが……。

「巨人の弱さに救われたところが大きかった。岡田監督は完全試合というとてつもない個人記録を犠牲にしたのだから、チームを優勝させて正しさを証明するしかない」(元捕手)

 背負った十字架は重いようである。

デイリー新潮編集部

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