カンボジアで拘束された特殊詐欺グループが、現地の日本人コミュニティで有名だったワケ【元公安警察官の証言】

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現地の日本人に声をかける

 彼らは日本人観光客に出会うと、「日本人ですか?」としつこく聞いていたという。

「そして、『観光? それともビジネス?』。『いつまでいるの? 宿泊先はどこ?』と質問したといいます。怪しい人たちなので、私が話を聞いた日本人は誰も相手にしなかったそうです」

 カンボジアの日本大使館も、怪しげな日本人たちのことを把握していた。

「それで日本人観光客や日本人コミュニティに、彼らと関わってはいけないと注意を呼びかけていました」

 摘発のきっかけは1月、日本大使館に特殊詐欺グループのメンバーと見られる人物からの「ホテルでかけ子をさせられている。外に出られないので助けて欲しい」という通報だった。大使館はすぐに警視庁に通報。警視庁はカンボジア警察に捜査を依頼し、1月末、19人の身柄が拘束された。

「カンボジア警察が押収した品の中に、25万円の被害に遭った都内の60代女性の連絡先があり、さらに、特殊詐欺グループが使っている日本人リストもあったそうです。これで彼らが特殊詐欺グループであることが確認されました」

 カンボジア警察は、押収した約60台の携帯電話や日本人リストなどを警視庁に送付。警視庁は4月6日、19人に対して逮捕状を取った。

「私は、日本人観光客などにやたらと声をかけたのは、利用できそうな人間を物色していたのだと見ています。特殊詐欺では、かけ子は多ければ多いほど、金が集まりますからね。また、ホテルで電話をさせるだけでなく、日本へ物や現金を送る、運び屋として利用しようとした可能性もあります」

 フィリピンの次はカンボジアである。特殊詐欺のグループは、なぜアジアを拠点にするのか。

「日本と時差が少ないし、アジアだと日本人は目立たないからです。フィリピンでルフィグループが逮捕されましたが、2017年には中国を拠点とした日本の特殊詐欺グループが逮捕されています。タイには、ルフィグループの残党がいましたし、マレーシアにも日本の特殊詐欺グループがいます。いずれ摘発されると見ています」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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