「何てかわいそうな結末…」 台湾で勃発した「脱走ヒヒ騒動」

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負傷ヒヒと“記念撮影”した不謹慎職員も

 桃園市は先に麻酔銃の使用を明言しており、ヒヒへの対応は“駆除”ではなく“捕獲”のはずだった。同市の職員が現場に麻酔銃を携帯していたにもかかわらず、ヒヒは猟師が放った散弾銃で命を落としている。第一の疑問は、実弾を持ったこの猟師がなぜ現場にいたのかという点だ。

 猟師は「依頼元は新竹県」「当日は桃園市と行動していた」と述べた。だが、新竹県は「依頼ではなく打診だった」と反論。桃園市は「猟師の銃が実弾だと知らなかった。猟師は通常、罠や麻酔銃を使う」と釈明した。

 この“証言の不一致”は、猟師に対する警察の聴取につながった。猟師が所属する「新北市原住民族狩猟協会」は聴取に激怒。28日に発表した声明で「要請元は新竹県」「桃園市はヒヒの救命処置をせず、少なくとも10分間は写真を撮影していた。この遅れが死亡につながった」などと、新竹県と桃園市を正面から批判した。

 また「野生動物の捕獲には散弾銃を使用するケースがある」と説明も添えた。野生動物が人などに危害を加える可能性がある場合、台湾の動物保護法は実弾発砲を含む即時の対応を定めている。ただし、散弾銃なら救命処置によって命が助かる可能性もあるため、協会は「10分間の写真撮影」がヒヒの死亡につながったと指摘したのだ。

 この「10分間の写真撮影」は、ネット上に動画が出回っている。動画の中で桃園市農業局の専門委員は、捕獲用ネットの中で横たわるヒヒにスマホを向けていた。「娘に写真を見せる」といった発言もあり、人々は激怒。専門委員は28日夜に辞任している。

猟師に発砲を命じた人物は誰か?

 第二の疑問は、猟師に発砲を指示した人物は誰かという点だ。現場にいた捕獲チームは、桃園市の農業局と動物保護局、六福村テーマパークの関係者、そして猟師だ。猟師は「桃園市農業局を名乗る人物が発砲を指示した。後に警察でその人物が『六福村テーマパークの獣医師』だったことを知った」と証言した。

 猟師によると、最初の電話は参加の“打診だけ”だったが、二度目の電話でヒヒ捕獲現場へ来るよう要請された。

 到着した捕獲現場は取材陣と野次馬で騒然。追い詰められて興奮したヒヒが人を襲う可能性もあったが、桃園市の職員が放った麻酔銃は3発外れた。そこで猟師が関係者に散弾銃発砲の指示を仰いだところ、指示を出した「桃園市農業局を名乗る人物」が実は「六福村テーマパークの獣医師」だったのだ。

 もっとも、六福村テーマパーク側は猟師の証言を即座に否定。名誉棄損で訴訟を検討すると言い出した。とはいえ、こうした捕獲作戦に協力する猟師は、無断で発砲できる立場ではなく、「指示した人物」が存在するはずだ。そのため、猟師と六福村テーマパークの“証言の不一致”は、どちらかが嘘をついていることになる。

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