【叡王戦】藤井六冠が菅井八段に先勝 対局後、大盤解説場が笑いに包まれたワケ

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 4月11日、将棋の第8期叡王戦五番勝負(主催・不二家)の第1局が東京・千代田区の神田明神で行われ、藤井聡太六冠(20)が挑戦者の菅井竜也八段(30)を破り、叡王3連覇に向けて先勝した。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

振り飛車で戦う菅井八段

 菅井は2017年に羽生善治九段(52)を下して王位の初タイトルを獲得。翌年、豊島将之九段(32)に王位を奪われたが、昨年2月には朝日杯将棋オープンで初優勝するなどの実力者だ。岡山県出身の関西棋士で、名伯楽・井上慶太九段(59)の門下生。名人戦にも登場した稲葉陽八段(34)とは兄弟弟子になる。

 藤井との対戦成績はここまで3勝5敗。昨年夏の名人戦・順位戦A級リーグでは藤井に完勝している。最近は少なくなった振り飛車党で、対局前日の前夜祭では「最高の居飛車と最高の振り飛車の戦いを見せたい」と意気込みを語っていた。タイトル戦を一度も落としていない藤井にとって、菅井は「最も不気味な存在」であったはずだ。

 先手は藤井。互いに角道を開けたが角交換はせず、菅井は飛車を三筋に動かす「三間飛車」の陣形で玉を「美濃囲い」に囲う。その後、「銀冠」に陣形を変え、中盤は互いの陣形が同じようになる。しかし一つ違ったのが、藤井が9筋の歩を「9六」へ進めたのに対し、菅井が挨拶しなかった(「9四歩」と応じなかった)こと。これで藤井は「9五」まで歩を進めた。菅井は得意の穴熊に囲うかと思ったが、なかなか囲わない。

昼食休憩の時間の公平性

 昼食休憩は正午から1時間あり、藤井が海鮮丼、菅井がうな丼を食べたが、菅井は休憩開始から15分もすると対局室に戻って盤に向かっていた。ABEMAで解説していた木村一基九段(49)は「菅井さんのこのタイトル戦にかける思いが伝わります」などと話していた。手番だった藤井は、再開の5分ほど前に戻った。

 叡王戦はタイトル戦としては持ち時間が各4時間と最も短く、秒単位で加算するチェスクロック方式のため進行は早い。昼食休憩の間は時計が止められるので、手番になった側は持ち時間を消費せずに次の手を考えることができる。

「不公平ではないか。なぜ二日制のような封じ手にしないのか」などと不思議に思うファンも多いだろうが、棋士たちはこうした食事休憩で生じる時間の差については気にしないようだ。

 手番が来た棋士が休憩時間にならないうちに休憩に入ってもいいが、その際は休憩時間まで持ち時間は消費される。多少の駆け引きもあるようだが、そこは「阿吽の呼吸」で互いが食事に入る。

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