陸自ヘリ、真の目的は中国・人民解放軍「侵攻作戦」対策だった【麻生幾 緊急寄稿】

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「リアル」を追究していた師団長と幕僚たち

 坂本師団長とともに、幕僚長(師団長の右腕)、2部長(情報責任者)と3部長(作戦責任者)といういわば師団の“心臓部”が一緒に乗っていたこと、また、宮古島に配置されている対艦と対空の部隊を守る宮古警備隊の隊長までが同乗していたことに、なぜ分乗しなかったのか、企業ならば考えられない、という危機管理上の問題を指摘する声があるが私は異なる意見を持つ。

 並々ならぬ決意で、またリアルを意識して早期の視察を決心した指揮官に付き添って、幕僚たちが同じ気持ちとなってリアルな説明をすることは重要だからだ。

 また、“陸軍”の本質からして、常に“前へ!”であり、そこにはまったくの躊躇はない。

 人の命の大事さを愚かにしたいわけではない。

 ただ、師団長とともにある!──とした幕僚たちの陸軍軍人たる「魂」を語ってこそ、坂本師団長と幕僚たちの本当の思いを継承できるのではないと痛感しているからだ。

 リアルを追求していた師団長と幕僚たち──だからこそ防衛省は事故後、我々の想像を超えるほど緊張したのである。リアルの視察をしていたヘリコプターの墜落に、中国が関与しているとの“誤報”がコントロールできないほどに拡散すれば、間近に人民解放軍が存在していることから、一気に極度の軍事的緊張となり、偶発的な戦闘が勃発すること──それを危惧したのだ。

 ゆえに、明らかな誤報である中国の関与を早々に否定することで、偶発的な戦闘を避けようとする当然の思いがあったと思われる。

 想像してみて欲しい。作戦室のディスプレイの一面に、膨大な数の中国の艦艇や航空機、また潜水艦の位置が表示されている、そのド真ん中で、自衛隊のヘリコプターがロストしたという“表示”がなされたことが、どれほどの衝撃でもって自衛隊幹部たちを震撼させたか──その場にいない限り、なかなか想像はできないのかもしれない。

 実は、この事故が起きたことをニュースで知った直後、私は、別の意味で震撼することになった。それは、ヘリコプターに幹部たちが乗っていたという情報が矢継ぎ早に入ってきたことでその想いはピークとなった。

 なぜなら、「宮古島における第8師団を始めとする陸上自衛隊の防衛出動」をテーマとした小説(角川春樹事務所発行)を約1ヶ月前に書き上げ、夏の発売を待つばかりであったからだ。実は、その小説のプロローグで、第8師団長がヘリコプターに乗って視察するシーンが登場する。その時、人民解放軍による密やかな動きが──。

 あくまでもフィクションの世界である。

麻生幾
作家。安全保障やインテリジェンス分野を中心に執筆。デビュー作『宣戦布告』はじめ『外事警察』など映像化作品も多い。他の著作に『ZERO』『トツ!』『前へ!―東日本大震災と戦った無名戦士の記録』など多数。

デイリー新潮編集部

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