陸自ヘリ、真の目的は中国・人民解放軍「侵攻作戦」対策だった【麻生幾 緊急寄稿】

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第8師団長が視察に向かった意味

 だがその「謎」を解く鍵があった。ロストしたヘリコプターに「第8師団長」の坂本雄一(さかもとゆういち)陸将という幹部が乗っていたことである。

 一般では、宮古島を防衛警備隊区とするのは第15旅団(沖縄県那覇市)と理解されている。

 だが、公表されることはない「ボウケイ」(防衛警備計画)のうちの、先島諸島防衛計画(名称は省略する)では、宮古島で自衛隊の「リアル」(防衛出動)がなされた時、その任務につくのは、15旅団ではなく「第8師団」と決められている。第8師団長と主要な幕僚が宮古島に実際に入って「CP」(指揮所)を設置し、その指揮の下、隷下にある複数の連隊が宮古島で戦闘を行うのだ。

 事実、昨年12月に行われた「YS」(ワイエス=日米共同指揮所演習)における“先島諸島防衛のシナリオ”でも、宮古島に攻めてくる人民解放軍を撃滅(げきめつ)するために宮古島に展開したのは、15旅団ではなく、第8師団隷下の「第12普通科連隊」(鹿児島県霧島市国分)と「第42即応機動連隊」(熊本市)だった。

 さらに、前述の先島諸島防衛計画には、熊本から第8師団が“抜けた”防衛警備の“空白”を補うために、どの師団が代わりに配置するのかまで明記されているのである。

 坂本師団長は、着任してわずか1週間で宮古島での航空偵察を実行した。本来なら着任後1ヶ月は挨拶回りなどのいわば「雑務」に忙殺されるところ、異例にも、自ら早期の視察を実現させた。しかも、その視察場所とは、リアルな戦争を意識した地点ばかりであった。

 そこに、坂本師団長にとっての並々ならぬ意志意識を感じ取る。

“宮古島にはオレが入って、最前線で指揮を執り、オレが宮古島を守る! だからこそ、その地をオレが見なくてはならない”──軍人としての強烈な意志を感じないではおれないのだ。

 それを窺い知る一枚の画像がある。

 防衛省が発表した同ヘリコプターの航空偵察の予定コースだ。詳細は省くが、そのコースとは人民解放軍の着上陸侵攻作戦、もしくは自衛隊の奪還作戦に使用するための「LZ」(着上陸ゾーン)や「BLS」(上陸地点)の「適地」(てきち)──県道や国道に直接アクセスできるスロープなどのある漁港やビーチ──の上空を飛ぶことになっていた。もちろん、坂本師団長の指示か、その思いを忖度した幕僚たちが作ったことは想像に難くない。

 坂本師団長の脳裡には、単なる「視察」ではなく、「実任務」(実戦)という言葉があった。まさにリアルを意識していたに違いない。

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