春ドラマの異色作「日本統一 関東編」 反社追放の時代になぜヤクザがドラマになるのか

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どうなる「日本統一 関東編」

 そんな2人も関東制圧には至っていない。巨大組織「丸神会」、跳ねっ返り組織「京浜連合」、カジノ目当てに横浜に進出した香港マフィアなどの存在があるからだ。おまけに警察も侠和会潰しに躍起になっている(1月にリリースされた正編のシリーズ最新作「日本統一55」終了時点)。

 そんな時期に放送されるのが、日本テレビの「日本統一 関東編」である。正編の現時点での舞台も関東だから、動きがシンクロしている。正編のファンは違和感なくドラマの世界に溶け込めそう。

「関東編」には本宮と山口らのほか、劇団EXILEの青柳翔(37)、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEの藤原樹(25)が出演。青柳と藤原は正義感の強い刑事に扮する。ほかに正編に出たことがない岩松了(71)、寺島進(59)らも出演する。

 青柳は日本テレビを通じ、出演の喜びを語った上で、「日本統一、あらためて一気見です」とコメント。大変に違いない。なにしろ計約4950分もあるのだ。寝ないで観ても3日以上かかる。NHK大河ドラマの全編より、はるかに長い。

 ただし、視聴者側は正編を知らずに「関東編」から観てもさほど問題ない。「侠和会は最大のヤクザ組織」「氷室と田村は最強でヒーロー」の2つを抑えていたら、楽しめるはず。そもそも正編を全部観た人も、役名や組織名の多くを忘れているに違いない。第1作のリリースから10年が過ぎている。

最大の魅力は巨悪を命懸けで退治するところ

 実質的にはヒーローものであり、ファンタジー作品とも言えるとはいえ、ヤクザが主人公だから、ドラマ化にはハードルもあったはず。それを最初に乗り越えたのは札幌に本社を置くフジテレビ系のUHB(北海道文化放送)だった。

 UHBは正編を制作するライツキューブと「『日本統一 北海道編』製作委員会」をつくり、全10話のドラマを2022年10月から放送。その後、BSフジとフジが大株主であるCSの日本映画専門チャンネルなどでも流した。

「ドラマだと自主規制してソフトになる部分も多いのでは?」と思われるかも知れないが、「北海道編」は違った。氷室と田村はピストルをバンバン撃ち、暴力も使った。

 2人は悪いヤクザが絡んだ食品会社幹部射殺事件の真相を追い、漁師たちを騙し違法賭博で借金漬けにしていた奴らをブッ潰した。ヘロイン密売などの背後にいたロシアの殺し屋たちも倒した。

 ドラマでもいつも通りだったわけだが、それを問題視した動きは聞かない。倒す対象が弱者を苦しめる悪い奴だったからではないか。「仮面ライダー」が悪玉をやっつけても文句が出ないのと一緒である。

 正編、ドラマを通じ、「日本統一」の最大の魅力は、市民の力ではどうにもならない巨悪を氷室と田村が命懸けで退治するところ。正編で氷室と田村は汚い大物政治家や日本を牛耳るフィクサーを排除した。これも「仮面ライダー」が人間の手には負えない悪玉をやっつけるのと同じである。

「関東編」も日本テレビとライツキューブなどによる「『日本統一 北海道編』製作委員会」によってつくられる。だから、正編と味わいが違ってしまう心配はないはず。

 その物語は、侠和会八王子支部にいた氷室と田村のところへ組員が殺されたとの連絡が入るところから始まる。2人は色めき立った。一方、警察側でこの事件の捜査を担当するのが、青柳翔と藤原樹が演じる刑事である。この事件の背後には巨大組織の存在があった。

 在京キー局での初放送により、「日本統一」フリークはさらに増えるか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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