藤浪晋太郎の「ノーコン病」を甘く見ていたアスレチックスの誤算 大谷との対決も思惑が外れマイナー落ちも
悩みながらも自己流を貫く
「藤浪自身にも問題がありました。二軍首脳陣がアドバイスをしても『でも…』と口答えをするので、みんな腫れ物に触るような雰囲気でした。練習メニューも彼自身が決めていました。そのせいか毎年、微妙に投球フォームも変わるんですよ。腕を振るときのヒジの高さ、踏み出すほうの左足をインステップぎみにするとか。オフのトレーニングでも、ダルビッシュ有(36)に師事した時期もあれば、自主トレで前田健太(35)に帯同したり、巨人・菅野智之(33)に教わりに行ったり…」(在阪メディア記者)
「迷い」もあったようだ。そんな“自分探しの旅”を終えられない状況下にあったとき、声を掛けてきたのが、代理人のスコット・ボラス氏(70)だという。
「環境を変えてみないか?」
かつて甲子園を沸かせたその才能を惜しみ、メジャーリーグの練習環境の素晴らしさなどを伝えたという。
阪神球団の関係者によれば、藤浪がメジャー挑戦の意向を打ち明けたのは、21年オフの契約更改の席だったという。イップスによる制球難は克服されないまま、昨年9月に正式にメジャー挑戦を表明したが、売り込みを受けたMLB球団側は「活躍」に悲観的で、同時期に米挑戦した千賀滉大(30)やネクストチャレンジャーの佐々木朗希(21)に関心を向けていた。
「ボラス氏は速いボールと『縦の変化球』がなければ、メジャーで通用しない、というのが持論。一応、藤浪はその両方を持っています。だからボラス氏は強気な交渉に出たのです」(前出・米国人ライター)
ボラス氏といえば、06年オフに松坂大輔氏(42)を60億円強(レート当時)の入札金でメジャーに移籍させた“敏腕代理人”としても有名だが、近年は日本球界と少し距離を置いていた。
「米大手エージェント会社のワッサーマン・メディア・グループの野球部門代表、ジョエル・ウルフ氏が日本球界との関係を強めてきました。昨年オフも千賀のメッツ移籍をサポートしています。ダルビッシュ、筒香嘉智(31)、鈴木誠也(28)など、日本の有名選手を担当し、『日本球界のことはウルフ氏』のイメージも定着しつつあります」(前出・記者)
ボラス氏はこの状況を巻き返そうとし、藤浪を“猛アピール”したのである。
のちにアスレチックスと年俸325万ドル(約4億2000万円/1年)で契約するわけだが、この金額は千賀の4分の1程度だ。仮に藤浪が素質を開花させれば、アスレチックスの費用対効果は抜群ということになり、ボラス氏は「日本人選手を見る目に長けている」と再評価され、ウルフ氏優勢の日本人選手市場でも形勢逆転となる。
「アスレチックスは映画『マネーボール』で知られたように、選手補強が独特。費用対効果をいちばんに考え、好選手を輩出したら、トレードに出して次世代の若手をもらう手法です」(前出・ライター)
「1年契約」なので、“ダメモト”の考えもアスレチックス側にはあったのではないだろうか。
話は、公式戦初登板の4月1日に戻る。
3回途中8失点と不甲斐ない結果はもちろんだが、アスレチックスは「人気の大谷」を迎えての本拠地主催、それも日本時代の元ライバルが迎え撃つということで“観客増”を期待していたそうだ。しかし、スタンドはガラガラだった。
「藤浪はオープン戦5試合に投げて、四死球18をカウントしました。米国の野球ファンは『四球=退屈』と見ており、藤浪を応援しにくいようです」(現地関係者)
「突然崩れるヤツ」――。試合を中継したラジオの実況アナウンサーは、そう嘆いていたそうだ。「中継ぎ降格」も囁かれるが、今やマイナー落ちの可能性も出てきた。
「メジャーリーグは日本と違って、自軍攻撃中、ベンチ前でキャッチボールをすることが禁止されています。そのせいか藤浪は、ベンチで肩を冷やさないよう運動器具を使っていましたが、試合中に突然崩れるのは、そのせいもあるのではないでしょうか」(同)
ベンチ前でのキャッチボール禁止が原因なら、MLB挑戦に向けた藤浪の準備不足は明白。強気のセールストークを続けた代理人も頭が痛いところだろう。
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