巨人のスタメンから重要な二人が外れたと思ったら、イヤな夢を見た【柴田勲のセブンアイズ】

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一度だけ4番を打ったとき

 またV9時代の話になるが、川上さんは私が不調でも決して1番を外さなかった。土井(正三)さん、もしくは高田繁との1・2番コンビは変わらなかった。

 もちろん、長嶋さん、王さんがクリーンアップを外れたことはない。もっとも二人が健在なのに私がたった一度だけ4番を打ったことがある。

 1969年7月3日、甲子園での阪神戦だった。この年は江夏豊が絶好調で巨人は開幕から3試合連続で完封負けを喫していた。ONを含めて誰も打てなかった。阪神の先発はその江夏だった。

 そこで川上さんは「ONの気分転換」ということで私を起用した。プレーボール後、高田がいきなり先頭打者アーチ、土井さんが四球で歩き、長嶋さんは倒れたが、私が2ランを放った。この試合は4対1で快勝した。

 調子に乗って川上さんに「明日も4番ですね」と聞いたら、「バカ言え、今日だけに決まっている」と言われた。

 何度でも言うがあくまでもONの気分転換でしかなかったのだ。

バタバタするな

 要は原監督が大久保博元コーチらと「この打線でいこう」と一度決めたら当分の間は我慢して貫く。コロコロ変えない方がいい。焦っても仕方ない。

 巨人は現在先発ローテをタイラー・ビーディ、フォスター・グリフィン、赤星優志、戸郷翔征、ヨアンデル・メンデス、横川凱の6人で回している。

 実績があるのは戸郷だけだが、現時点ではこの6人が誰の目にも先発に適しているということだ。多少不安があってもしばらくは押し通そうとの構えだろう。高橋優貴が支配下復帰したが使えれば儲けものだ。

 それにしても4番の岡本には一発が欲しいところだ。いまだにノーアーチだ。主砲が打てばチームは乗っていける。岡本に3本くらい出ていれば結果も変わっていたはずだ。

 11日からは東京ドームに2位・阪神を迎えての3連戦、14日からはバンテリンドーム ナゴヤに乗り込んで対中日3連戦だ。
 
 開幕前、今季の順位予想で(1)巨人、(2)ヤクルト、(3)DeNA、(4)阪神、そして(5)広島、(6)中日を下位とした。 

 ペナントレースは始まったばかりだが、どのチームも上位進出に向けて頑張っている。

 巨人にはバタバタするなと言いたい。次回は「夢のある話」をしたいところだ。

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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