「中国軍が来たら投降する」台湾“最前線の島”のリアル 一方で民間の軍事セミナーが活況

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目立ちたくない亡命香港人

 とはいえ、馬祖にもまだ約3千名の台湾軍将兵が駐屯しているという。空港で出会った入隊4年目の志願兵は、どうやら軍事オタクらしく、軍で20年は勤め上げるつもりだと話す。士気旺盛かと思いきや、「人民解放軍が攻めてきたらどうするの?」と尋ねると、

「島民の意思に従い、もし島民が投降するならわれわれも武器を構えずに投降せよ、と上官に言われています」

 とのこと。これまで話を聞いてきた島民たちの顔を思い浮かべた。彼らはウクライナ人のように、侵略者に対して果敢に立ち向かうだろうか。少なくとも今回の旅では、筆者にはその確信が持てなかった。

 中台危機を考える際に、先年の香港の悲劇を考えないわけにはいかない。中国政府によるウイグル人の迫害、香港の急速な中国化は、台湾の人々にも人ごとではない。2020年の「香港国家安全維持法」成立以来、多くの香港人が留学生として、あるいは不動産を購入して長期滞在する形で台湾に逃れ、今では台湾全土にコミュニティーを作っている。

 私は数少ないつてから、亡命香港人の本音を聞き出そうとしたが、ほぼ全員が取材NGだった。初対面でも屈託なく冗舌な台湾人とは対照的だ。彼らは「中国共産党の独裁に反対して台湾に移住した」と見られがちな微妙な立場であるため、「目立ちたくない」という気持ちが強いようだ。民主的な台湾といえども、どこに中国のスパイが潜んでいるか分からない。下手をすると、香港人同士でさえも疑ってかかる必要がある。彼らは慎重を期して息を潜め、必要以上に他人と接触したがらないのだ。

民間の軍事セミナーが活況

 それでも、本島の台湾人の中に、少しずつ中国との紛争を真剣に憂慮する人々も現れ始めている。今年2月、「黒熊學院」というグループが定期的に「戦争に備える防衛セミナー」を台湾各地で開いていると知り、台北市内の会場を訪れた。

 会場では40人ほどが最新の軍備知識に関するレクチャーに耳を傾け、災害時の衛生措置の仕方の講習、避難訓練などを受けていた。

 黒熊學院CEOの何澄輝さんに経緯を聞いた。

「中国からの揺さぶりが常態化しているのに、ここ50年は大きな衝突もなく交流が続けられたせいで、人々は“戦争など起こるはずはない”と不感症になっています。われわれはそんな人々に警告を発信しているのです」

 国防部系のシンクタンクに所属していた何さんは、ロシアのウクライナ侵攻が始まったことに危惧を覚え、国防のための市民組織を作ろうと思い立った。さる民族基金会からの募金5万元を元手に始め、民間からの寄付も募ったところ、千人以上から475万元(2千万円超)が集まった。活動に賛同する半導体企業の創業者からの支援もあり、昨年9月からセミナーを開いている。

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