大企業の「優遇措置」を守ろうとする族議員、宗教法人の非課税特権 不公平すぎる日本の税制の実態

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「最も自らを律しなくてはならないのですが…」

 さらには、

「政治団体も同様です」

 と三木前学長が続ける。

 政治団体に入る寄付や、パーティー・機関紙の収入に法人税がかからないのは知られた話だが、

「特筆すべきは相続です。我々が親の事業を継承しようとした場合、会社の株式を相続することになり、通常、相続税がかかります。しかし、政治家の場合、親の政治団体から子の政治団体へ寄付するという手法を使えば無税で相続できる」

 実際、自民党が誇る元総理の2世二人、小渕優子・元経産大臣、小泉進次郎・元環境大臣の政治資金の流れを見れば、そうした財産の“継承“が行われていることがわかる。

 また、総裁である岸田首相も父・文武氏から地盤を引き継いだ後、父の関連政治団体「新経済政策研究所」から、自身の「新政治経済研究会」が寄付を受けている。これが将来、あの“外遊観光“息子秘書官にも受け継がれるのだろう。

「本来、政治家というのは、国民に税負担を求める決断をする立場ですよね」

 と三木前学長が嘆息する。

「だからこそ最も自らを律しなくてはならない。ですが実際は己を一番優遇しています。そこが日本の税制の根本を揺るがしていると思いますし、だからこそ信用されないんでしょう」

莫大な金額を「税金逃れ」で失ってきた日本

 公平でもなければ、簡素さも、中立性にも乏しい――ニッポンの税制の問題点が浮かび上がった。その国を、グローバル化の波が襲う。

「国際取引が進む中、『税金逃れ』で、日本は莫大な金額を失ってきました」

 とは、『巨大企業は税金から逃げ切れるか?』などの著書を持つ、公認会計士・税理士の深見浩一郎氏。

「TJNという機関の調査によれば、1999年から2007年までの9年間で日本は1700億ドルを逸しているとか。1年間にすると189億ドル。今ではこの額が2倍になっていてもおかしくはありません」

 189億ドルの2倍は378億ドル。現在の為替相場なら約5兆円、年間で消費税2.5%分の額を失っていることになる。

 税金逃れとは何か。

 簡単に言えば、国による税率の差異やタックス・ヘイブンなどを用い、企業や個人が納税を合法的に回避することである。パナマ文書などの流出で、その実態が明らかになってきた。

「有名な手法として、ダブル・アイリッシュ・ダッチ・サンドイッチがあります」

 と深見氏が続ける。

「これはAppleやFacebook、Googleが使った方法。彼らは、アイルランドやオランダ、バミューダに会社を設立し、そこに資金を流すことによって、2007年から09年の3年間で海外での課税を31億ドル減少させました」

「やりたい放題やられている」

 日本が舞台の場合、手法はもっと単純だ。

「Amazonの関連会社が日本で法人税を適切に支払わず、巨額の追徴課税を課されたことがありました」

 これはPEという制度を利用したものである。

「日本政府は、外国企業が国内に『恒久的施設』(PE)を持つ場合、その企業に課税できます。実際、Amazonは国内に施設を有していましたが、巧みに課税要件をすり抜け、倉庫に過ぎないと主張し、税を支払っていなかった」

 当局はこれに納得せず、07年に3年分、140億円前後の追徴課税を課した。社会貢献などきれいごとを並べたCMがびっくりの展開である。

 無論こうした“節税“はGAFAだけではなく、他の大企業や富裕層も行っている。しかも、

「当局が取り締まっても、モグラたたきのように別の手法が生まれてくる。今後、取り逃される税金はますます増えていくでしょうね」

 源泉徴収や年末調整によってサラリーマンがすべてを捕捉、納税させられる中、富裕層はかように富を“防衛“しているわけなのだ。

「今後の日本では増税が見込まれますが……」

 と締めくくるのは、前出の三木前学長。

「しかし、現状の税制は不公平なことばかり。国民が物言わぬのをいいことに、やりたい放題やられているわけです。このような勝手を許してはいけない」

 ついに訪れた「五公五民」時代に知り、そして怒ろう。

 大増税の前にやるべきことは、きっとある。

週刊新潮 2023年4月6日号掲載

特集「“給料の5割”召し上げで『五公五民』 『大増税ニッポン』の税金は不公平」より

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