大企業の「優遇措置」を守ろうとする族議員、宗教法人の非課税特権 不公平すぎる日本の税制の実態
複雑な計算式
公平、中立、簡素。これが税制の基本原則である。その観点から見れば、前項の実態は公平性の点から疑義が残るが、今度は簡素か否かの話。
持ち家など不動産を持つ向きには、これから令和5年度の固定資産税の納税通知書が送られてくるが、
「この評価、実にミスが多いんですよね」
とは、前出の三木前学長。
「地方自治体にとって固定資産税は、税収の4割を占めるほど重要な税です。しかし、制度が複雑すぎて、自治体の職員ですらチェックが追い付かず、また間違える。知らぬ間に過剰に取られているなんてことはよくあるケースですよ」
固定資産税の計算式は、まずは「宅地」「雑種地」といった土地の地目別に「評価額」を決める。「宅地」の場合、毎年発表される公示地価の7割が一般的だ。それに1.4%を乗じた値が納税額となるが、実際の用途に従って細かい補正がなされる。家屋の計算は、再び同じ建物を建築した場合の価格が元だが、経年劣化などで補正されるから、実に複雑だ。
固定資産税徴収の問題点
「固定資産税の徴収に関する問題点は、きりがないくらいありますよ」
とは、不動産鑑定士で、著書『固定資産評価解体新書』を持つ、堀川裕巳氏だ。
「私も相談に乗っていますが、まず土地の地目を間違えられることがある。経験した例ですと、ほとんど同じような利用状況である隣り合わせの二つの土地が、評価額において500倍の差がついてしまいました。これは片方を『宅地』、片方を『山林』と誤って評価していたためですね」
あるいは、
「間口や奥行の広さなどの認定が間違っていることもあります。また、土地の高低差を間違えられたことも。2メートルも高いところにある道路に出入りができることを基準に、高い値が付けられたこともあり、抗議したら評価額が8千万円から5千万円に下がりました」
過去の新聞報道を見ても、20年以上誤徴収され続けていたなど、ショッキングな例もある。
二束三文の土地にも…
なぜ、このようなミスが起こるか。ひとつはマンパワーの不足にある。
「市町村の税務課の職員さんはそもそも数が少ない上に、公務員改革で数を減らされた。ですから、本来行うべき現地の調査をやっている時間がないんです。地図や登記のみを見て、誤った判断を下すケースが相次いでいます」(同)
また、
「固定資産評価基準の解説って500ページくらいある分厚いものです。しかし、市町村の担当者は2~3年で異動してしまう。そのため、制度をよく理解しないまま、過去の例に従って評価しているのが実情なんです」(同)
日経新聞が調査したところによれば、2018年度、東京23区と全国の政令指定都市でミスが発覚し固定資産税を払い戻したケースは14万件、額にして72億円に上ったとか。これだけ多いともはや社会問題だが、これは氷山の一角。
「固定資産税は『賦課課税』と呼ばれまして……」
先の堀川税理士が言う。
「納税者が計算して申し出る『申告納税』と違い、市町村から通知されるもの。複雑なので納税者側はミスがあっても気付かない。お上が言うんだから、その通り支払おうとなるのが通例で、普通は異議申し立てなんてしませんよね」
また、固定資産税評価の元となる公示地価自体が実態に即さないケースも多く、買い手がいない二束三文の土地に多額の税が課されることも珍しくないのだ。
「こうした制度の問題点を指摘する声は多々上がっていますが、改善は一歩も進んでいません」(同)
身近な税の土台は、実は腐りかけていたわけだ。
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