大企業の「優遇措置」を守ろうとする族議員、宗教法人の非課税特権 不公平すぎる日本の税制の実態

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配当利益をほぼ丸取り

 前述の21年3月期のソフトバンクG単体での利益は約1兆4538億円。が、納めた法人税はゼロ。菅氏の試算によれば、約4863億円分の納税を免れたことになる。

「この制度は個人株主が市場の主役だった時代、二重課税を避けるためにできたもの。法人株主が主体の現状に即していない」

 憤る向きも多いだろうが、こうしたうまみを享受するのは同社にとどまらない。

「この他にも、大企業に有利な法人税上の措置は日本にたくさんあります」

 と菅氏が続ける。

「外国の子会社からの受取配当金の95%は収益に算入しなくてOKという制度。また、100%子会社に関しては、その会社の損益を親会社の収益に合算できるという制度もある」

 これによって、グローバル化の波に乗り、海外に子会社を多数持つ企業はその配当利益をほぼ丸取りできるし、連結子会社が赤字を出せば、それで親会社の黒字を相殺し、納税額を少なくすることもできるのだ。

年間6兆円

 更には、

「租税特別措置という制度もあります」

 と「不公平な税制をただす会」共同代表の税理士、浦野広明氏が後を受ける。

「試験研究費等の研究開発税制によって法人税を減税するなど、国から政策的に認められた特例です。ほとんどが大企業にしか適用されていません」

 同会では、こうした優遇税制により、大企業がどれだけ減税されているか試算したという。それによれば21年度の数字で、

〇トヨタ自動車=約2975億円

〇日本郵船=約829億円

〇本田技研工業=約1768億円

 などとなる。

 菅氏が続ける。

「政府統計から、こうした優遇税制によるトータルの減税額を試算してみました。20年度は、法人税の優遇措置で約5兆2千億円、租税特別措置で約1兆1千億円、計約6兆3千億円となりました」

 消費税1%で年間2兆円の財源が生み出されるといわれるから、これだけで3%分の財源が生まれる。消費税を上げるのに莫大な政治エネルギーを費やしていることが、バカバカしく見えてこないだろうか。

族議員の抵抗

 この租税特別措置については、これまで何度も疑義が呈されている。

「09年、民主党政権誕生時にも議論が出ましたよ」

 と回想するのは、峰崎直樹元参議院議員である。

「私は財務副大臣に就任し、この制度にメスを入れようと『租税特別措置透明化法』を成立させました。これによって、どのような特別措置が設けられ、どれくらいの額が減税されているのかが毎年公表されることになったんです。その過程では優遇措置を受けている企業の実名公表も検討されましたが、経済界の要望を受けた、というより忖度(そんたく)した族議員や官僚の抵抗で、実現できませんでした」

 この問題がタブーであることがよくわかる。

 ソフトバンクGに聞くと、

「投資事業に関わる税制は日本をはじめとする関係各国の税制に従っています」

 また、他の企業も大要、法令に基づいて適切な処理を行っている旨回答した。

 前出・浦野氏が言う。

「消費税導入からの34年間で、国と地方の法人税の税収は324兆円も減っている一方、消費税収は476兆円。応能負担の原則から言えば、大企業が得をし、庶民が割を食う税制は、到底認められないのではないでしょうか」

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