大企業の「優遇措置」を守ろうとする族議員、宗教法人の非課税特権 不公平すぎる日本の税制の実態
確定申告の期間が終わった。この機に源泉徴収票を見たサラリーマン諸氏は、稼いだ金からどれほど税金や社会保障費――公的負担に召し上げられているかに慄然としただろう。折しも政府が公表した国民負担率は実に5割。「大増税」時代に納得できないニッポンの税金。
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五公五民。社会科の授業で習った記憶があるだろう。収穫した米のうち、半分を領主に召し上げられる――。江戸時代の農民の負担の重さを表した言葉で、百姓たちはその苦しさのあまりしばしば一揆を起こしたとされる。そんな時代の終わりから150年余り経ついま、再び同じ世が到来しつつある。
2月21日、政府が発表した令和5年度の国民負担率の見通しは46.8%に上った。
国民負担率とは、分母が国民所得、分子が租税負担額+社会保障負担額で表される。ざっくり言えば、日本国民をグロスで見た場合、稼いだ金のうち、税金と社会保障費で半分を差っ引かれ、手元に残るのは半分だけということになる。
初めてこの数字が発表された53年前、その数値は24.3%。半世紀前の国民と比べれば、我々の「公的負担」がいかに重くなったかが分かるというものだ。
「この分子には、富裕層の納めた税金や法人税も含まれていますから、単純に各人の所得の半分が税金や社会保障費に消えていることを示すものではありません。さりとて、この負担が決して軽いものではないことは間違いない」
と述べるのは、青山学院大学前学長で『税のタブー』などの著書を持つ、三木義一氏である。
「国民負担率を見れば、北欧3国など日本より高い国はありますが、これらの国は、税負担は重いけれど福祉が充実しているなど、税の使われ方に納得感が高い。翻って日本はどうでしょうか。使い道が不透明なケースがたくさんある」
しかも岸田政権は「防衛増税」に「異次元の少子化対策」などを打ち出している。今後も負担感は増していく一方なのだ。
「日本の税制は、公平性の原則から見て疑問に感じる点が多々あるのですが、サラリーマンが年末調整されて納税が済んでしまうなど、政府によって納税者が税に無知であることを強要されているため、そこになかなか気が付かないのです」
以下ではその具体例を見ていこう。
15年で課税4回
日本の大富豪といってまず名が挙がるのは、孫正義氏。経済誌「Forbes」の富豪ランキング日本人トップの常連で、昨年の総資産額は2.7兆円だった。彼が率いるソフトバンクグループは、1兆円超の利益をたたき出すこともある超優良企業であるが、
〈ソフトバンクG、15年で課税4回 繰り返す法人税ゼロ〉
昨年8月、日経新聞朝刊1面に躍ったこんな見出しに、目を丸くした向きも少なくなかったのではないか。
記事によれば、ソフトバンクGに法人税が課されたのは2007年3月期以降でわずか4回のみ。連結での純利益を、日本企業史上最高となる約5兆円もたたき出した21年3月期の決算でも、単体での法人税はゼロだったという。納得できないとの声が上がるのも当然だ。
無論、同社が脱税しているわけではない。なぜこんなことがまかり通るのか。
「法人税制がおかしいからですよ」
と憤るのは、「不公平な税制をただす会」の共同代表で税理士の菅隆徳氏である。
「同期のソフトバンクGの売り上げの99.7%は関係会社の株を持つことによる配当金収入ですが、法人税の特例で受取配当金は収益に算入しなくてもいいと定められている。ソフトバンクGは投資がメイン事業のひとつですからその部分の収入が大きくなるわけで、法人税がゼロの年が多いのは当然です」
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