おひとりさま急増で「相続人のいない遺産」「遺体」はどうなる? 人ごとではない終活最新事情

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遺言を書くタイミング

Q3 おひとりさまの終活は遺言がカギになりそうですが、面倒ではないですか。いつ、どのように書けばよいのか分かりません。

 遺言を書く時期は、早ければ早いほどいい。当然ながら、人間はいつ死ぬか分からないからです。ただ、一つのタイミングとしては、親が死んだ後じゃないでしょうか。生まれながらにして天涯孤独という人は滅多にいませんが、兄弟が亡くなっていたり、一人っ子だったりすると、親が亡くなれば本当に身寄りがなくなる可能性が高いからです。

 遺言は何度も書き直すことができますので、最初は試しに気軽に書いてみればいい。まずメモ書きのエンディングノートのようなものを作り、誰に何を頼めばよいかを自分の中で整理した上で、遺産や葬儀、遺骨、遺品の扱いについて記していく方法もあります。

 市販のエンディングノートも、亡くなる前後にしないといけないことが網羅的に書いてあるので、チェックリスト的に活用できます。まずは自分の終活について考えるきっかけにはなるでしょう。

――そんなメモ書きでもいいんですか?

 最終的には、やはり法的効力がある遺言が主軸になると思います。

紛失のリスク

 遺言には大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の二つがあります。自筆証書遺言は文字通り、遺言の内容、日付、氏名がすべて自筆で書かれ、押印されているもので、公正証書遺言は、公証人が用意する書面で作成したものです。

 自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑があればすぐにでも書くことができます。専門家のチェックを受けることは可能です。財産目録以外の部分は、本文はもちろん、すべてを自筆で書く必要があります。民法に従った法的文書として、定められた書式に沿って書かなければなりません。自筆証書遺言が自宅で保管されている場合は、被相続人の死亡後、家庭裁判所で遺言書を開封して、書式や内容を確認する「検認」という手続きを経なければならず、遺言執行まで時間がかかるのが難点です。また、自宅で保管していると紛失のリスクもあります。ただ、今は自筆証書遺言を法務局に預けるという制度もあります。この場合、検認は不要で、紛失のリスクもありません。

公正証書遺言の大きなメリット

 一方の公正証書遺言は、基本的に公証役場に行って、公証人と証人二人の面前で遺言の文面を確認しながら作成します。弁護士や行政書士に依頼して、公証人との事前のやり取りを全部任せることもできます。検認が不要なので、被相続人の死亡後すぐに遺言を執行できます。費用はかかりますが(遺産額やあげたい人数によっても違いますが、たとえば5千万円以下で1人にあげるのであれば、4万円ほど)、公証人や弁護士らが関わるので不備が生じる可能性は低く、公証役場で保管されるため紛失の恐れもない、という大きなメリットがあります。

 自筆証書遺言は本来、遺言者が自分で遺言を保管しなければなりませんから、孤独死のような場合は、遺言の有無すら分からないこともありえます。前述のように現在は法務局による自筆証書遺言の保管制度がありますので、申請して保管しておくと安心です。

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