おひとりさま急増で「相続人のいない遺産」「遺体」はどうなる? 人ごとではない終活最新事情
休眠預金問題
――申し立てされないとどうなりますか。
遺産は放置されることになり、宙に浮いたままとなります。
その最たるものが、身寄りのない死亡者の預金です。銀行などで眠ったままになってしまう「休眠預金」という問題ですね。
また、土地、有価証券などの財産が名義変更もされず、半永久的に放置されるケースもあります。
こうした「もったいない」状況を避けるためにも、身寄りのない「おひとりさま」は遺産相続の準備をしておいた方がよいと思います。おひとりさまが増えている今、誰にとっても人ごとでなくなってきています。
受け取る側は現金の方が勝手がいい
Q2 自分の財産をきちんと望み通りに処分してもらうためには、どうすればよいでしょうか。
私が相談された場合には、法的拘束力のある遺言の作成を強く勧めています。
完全に身寄りのないおひとりさまであれば、いわゆる「遺留分」(兄弟姉妹を除く法定相続人に最低限保障される遺産取得分)などを考慮する必要がありません。要は気を使う必要がないのです。
ですから、遺言は被相続人である本人が「思った通り書けばいい」のです。寄付したければ寄付でいいし、遠い親戚や友人にあげたければそうすればいい。「誰に何をあげなければならない」といった制約はなんらありません。本当に自由に、あげたい人にあげればいい。
私が相談を受けて書いた遺言でも、自分が生まれ育った自治体に遺産の全額を寄付した人もいますし、ひとり身の人をサポートするNPO団体や、犬が好きだからと、犬を保護する協会に寄付した人もいます。
ここで注意したいのは、受け取る側は現金の方が勝手がいいということです。不動産や有価証券だと、現金化する手続きが面倒で、かえって困る場合もあります。おひとりさまの場合、遺言を実際に執行する「遺言執行者」をまず指定します。その上で、自分が亡くなった後にすべての遺産を換金してもらい、それを「遺贈」という形で、公益財団法人などに寄付してもらうのです。
遺言執行者を友人にしない方がいい理由
遺贈の場合、遺贈先の承諾を得る義務はありませんが、団体への寄付などは拒否されることもあり得ますので、事前に確認しておく必要があります。個人への遺贈については、必ずしも事前に伝えておく必要はありません。遺言者の気が途中で変わって、もらえると思っていた人とトラブルになることもありえますから。
遺言執行者は、法定相続人がいるのであれば法定相続人がなればよいのですが、おひとりさまの場合は遺言であらかじめ指定することになります。
おひとりさまが遺言執行者を指定する際、その人に全部あげるのでない限り、友人を指定するのはやめた方がいい。何かと苦労をかけるし、きちんと執行してもらえるかも分からないからです。遺産をネコババする可能性もないとはいえません。一般的には専門家の方がその危険性が低いので、弁護士や司法書士、税理士といったプロに頼むのが無難です。
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