LGBT法案、自民党の取り組みの遅さに経団連会長が「恥ずかしい」 背景に政権との力関係の変化が
経団連のトップが政権与党を名指しで「恥ずかしい」と批判したのは3月20日のことである。一体何があったのか。全国紙経済部の記者が言う。
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「経団連では月曜日の午後に、記者クラブの『財界クラブ』による定例会見が行われます。この日、記者からは“LGBT理解増進法”に対する自民党の取り組みについて質問が出ました。そこで、十倉雅和会長は訪米した際に、向こうの政府要人から法整備の進捗を聞かれたエピソードを挙げ、与党自民党の取り組みの遅さを“恥ずかしいくらい”とコメントしたのです」
知られているように、LGBT理解増進法は性的少数者への理解を広げるための法律だ。岸田文雄首相が国会提出に前向きな姿勢を示しているが、“伝統的家族観が崩壊する”という保守系議員の根強い反発もあって法案提出にはいたっていない。でも、「財界総本山」とLGBT問題は、どんな関係があるのだろうか。
政権との力関係
そこで当の経団連に聞いてみると、
「経団連は『企業行動憲章』というものを作っておりまして、従業員の多様性や人格、個性を尊重する働き方を実現するとしています。また、6年前にはその手引書で性的マイノリティーにも言及しています。ご存じのように5月には広島でG7サミットが開催されますが、参加国のうちLGBT保護に関する法整備をしていないのは日本だけ。“恥ずかしい”との発言は、サミットの議長国がそれでいいのかという意味もありました」(広報担当者)
もっとも経団連だって森喜朗元首相の女性蔑視発言を中西宏明会長(当時)が擁護して、物議を醸した前科がある。根っからのフェミニスト団体であるはずはないのだが、今回、先んじてLGBTの法案を“推し”て見せるのは、政権との力関係もある。「経済界」編集局長の関慎夫(のりお)氏が説明する。
「もともと経団連はプライドの高い組織で政権に対して遠慮なしにモノ申す気風がありました。ところが、安倍晋三首相時代は自民党に押されっぱなし。第2次安倍政権が発足した際には首相が経団連会長ではなく真っ先に新経済連盟の三木谷浩史氏(楽天会長兼社長)と会ったほどで経団連はずっと政治の風下に立たされてきたのです。それが、岸田政権になってようやく巻き返しに出たということでしょう」
「聞く力」の岸田首相に対して、経団連会長の「モノ言う力」やいかに。