Z世代のコンビニの使い方 「あってほしいサービスは?」にまさかの回答の世代感覚
芝浦工大生への質問(3)「コンビニに望むサービスは?」
【おもな回答】
・とくになし ※回答者多数
・A1対応のコピー機
・手数料無料のATM
──「とくになし」と回答した学生がほとんどでした。
渡辺:今回、最も印象的だった回答です。コンビニは90年代にさまざまなサービスを導入していき、2000年くらいに今の形が完成したんですよ。もちろん、21世紀に入ってからもPBやコンビニコーヒーが登場したり、セルフレジが導入されたりと、着実に進化・変化を遂げています。しかし、90年代に比べるとその変化が分かりづらい。だからZ世代から見ると、コンビニに対するもともとの期待値が低いのかもしれませんね。彼らにとっては、コンビニで酒を販売していたり、配送サービスができたり、ATMを利用できたりすることが当たり前。でも、これらのサービスは、かつてコンビニにはありませんでした。コンビニの劇的な進化を目の当たりにした我々の世代とは、印象が大きく異なっているのでしょう。Z世代にとってコンビニは空気みたいな感じなのかな?
原田:そうですね。あって当然で、特別感は何もない。学生たちからはコンビニに対する不満点や満足点があまり積極的に出てこなかったですからね。ただし、都市部の学生ほどそうした風潮が強いのですが、地方ではまだまだコンビニに対するイメージは悪くないと思います。
渡辺:トレンドを確認できる場所ですよね。
原田:その通りです。東京で何か流行っても、地方に届くまでに時間がかかります。たとえば、東京でタピオカが流行ったときにも「SNSで流行っているとは聞くけど、地元にはタピオカのお店がないなぁ。本当に流行ってるの?」という状態です。その後、半年から1年ほど遅れて地方に流行が届きますが、このとき最初にコンビニで商品化されるケースが多い。コンビニでタピオカを見かけ、そこで初めて「ああ、やっぱり流行ってるんだ」と実感するわけです。
渡辺:Z世代でも都会と田舎で感度が異なるんですね。
原田:もちろん、SNSのおかげで昔に比べれば情報格差はなくなりましたけどね。また、インターネットで買い物もできるし、イオンモールなどのショッピングモールが最小限のタイムラグで東京のトレンド商品を扱うこともできますから。
渡辺:流行の感度は見た目や雰囲気でも伝わります。僕らの時代は、見た瞬間に「あ、コイツ地方出身者だな」ってわかりましたよね。
原田:わかりましたね(笑)。でも、今はわからなくなりました。GUやユニクロも全国にあるし、とりあえずそれを着ておけば無難にシュッとする。やはり実店舗の有無が大きいんですよ。ファッションアイテムはECサイトでも購入可能ですが、都市部のおしゃれなカフェや原宿の最新スイーツなどは、どうしても地方では手に入りません。だから、そうした流行は商品化されたコンビニで確認することが多いわけです。ある意味、コンビニは地方の若者にとって“数少ない都会コンプレックスを解消するトレンドスポット”になりつつある。コンビニ業界は高齢者ばかりでなく、もっと若い人にも目を向けてほしいですね。今で言うと、韓国の有名コスメ「rom&nd(ロムアンド)」がローソンとコラボしていて大変話題になっています。女子学生たちも久々にコンビニでドキドキしているのではないでしょうか。
──「A1対応のコピー機」は建築学部の学生ならではの要望ですね。
渡辺:「図面を印刷するためにA1のコピー機が必要」というのはかなりニッチで、おそらく初めて聞く要望です。僕はローソンやファミマに導入されているシャープ製のマルチコピー機の開発に関わりましたが、家庭用のコピー機はA4が多いので、A3需要があることは知っていました。でも、A2やA1は利用者がかなり限定されますからね……。とは言え、これからのコンビニはエリアに合わせた変化が求められます。大学の近隣に住む学生のため、エリア内にA1対応のコピー機を導入すれば、学生客の来店増が見込める可能性もあります。
原田:そうした違いを意図的・戦略的に実施した方がいい。「エリアごとに合わせてコンビニが変化する」の発展系として、店内の雰囲気やサービスを変えたコンビニが増えれば、再びコンビニもワクワクできる場所になるんじゃないかと思います。
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