【インタビュー】“刑務所の先生”になった「吉本興業」元専務が、「ZARD」の名曲で爆笑を誘った理由 10年で100回通って目撃した“塀の中”の秘話

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 吉本興業といえばいわずもがな、ダウンタウンや明石家さんまをはじめ、数多の人気芸人やタレントを擁する、日本最大の“笑いの会社”である。そこで宣伝広報担当として活躍し、専務まで勤め上げたのが、竹中功氏(64)だ。現在は独立し、広報や危機管理が専門のコンサルタント業務を行う他、ラジオパーソナリティー、そして作家としても活躍中の竹中氏が、この3月、10作目となる著作『それでは釈放前教育を始めます!』(KADOKAWA、1540円)を上梓した。実は竹中氏、10年前から、全国各地の刑務所へ赴き、受刑者に対し“ある授業”を続けており、本作では、その中身を紹介しているのだそう。なぜ竹中氏は刑務所で授業を行うようになったのか、そしてそこで、目にしてきたものとは――。(前後編のうち「前編」)

専務を移住させるプロジェクトで

 竹中氏は1959年大阪市生まれ。同志社大学法学部を卒業後、吉本興業株式会社に入社。宣伝広報室の設立に携わり、芸人養成学校の「よしもとN S C」の立ち上げ、月刊誌「マンスリーよしもと」の初代編集長などを経て、よしもとクリエイティブ・エージェンシー専務取締役に。2015年7月に退社して現在に至る。

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 釈放前教育というのは、仮出所や満期出所が近くなった受刑者に対して、娑婆に出た時にちゃんと生活できるよう、社会のルールを伝えるために設けられているものです。当然のことながら、一般社会は刑務所とは何から何まで違います。何の準備もせず出所してしまうと、社会生活に適応できず、最悪の場合、再び罪を犯し、また刑務所に逆戻りしかねません。

 そんな重要な役回りを、なんでボクがやることになったのか。きっかけは、吉本時代に遡ります。2011年、吉本が、全国47都道府県にそれぞれ、所属の芸人を移住させ、地方活性化を支援するというプロジェクトを立ち上げました。これが各地で大好評だったことから、13年にそのパワーアップ版として、全国を7つのブロックに分けて、それぞれに、今度は吉本の専務を移住させることにしたのです。当時専務だったボクは、その中で東北エリアを選択しました。理由は、これまでの人生で一番縁がなかったから(笑)。それで仙台に住むことになったのです。

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