「舞いあがれ!」の視聴率はなぜ低かったのか

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視聴率を獲りにいっている「らんまん」

 作風も指向性も全く違う朝ドラを視聴率で比較するのは無理がある。視聴率を第一に考えているように見える作品もあるが、そうでない作品もある。

「らんまん」の第3話終了時点までの平均視聴率が個人8.8%、世帯15.8%。今後は娯楽色が強まるのでアップするはず。主人公の槙野万太郎を演じるのが子役・森優理斗(9)から神木隆之介(29)に交代する第3週(17日日~)以降、上昇気流に乗るだろう。

 なにしろ主人公・槙野のキャラクターがいい。モデルは日本植物学の父・牧野富太郎博士だが、そのキャラをほぼ受け継ぐとされている。富太郎博士が面白い人生を送っているのだ。

 小学校中退ながら、帝国大学理科大学(現在の東京大学理学部)の植物学教室への出入りを許され、やがて次々と新種の植物を発見し、東大の講師などを歴任する。

 一方で植物を採取するためにカネをじゃんじゃん使ったことから、大きな借金を抱えた。それでも植物学者としてはピカイチだったから、皇居に参内し、昭和天皇に植物学をご進講する。

 脚本は演劇畑が長い長田育恵氏(46)。早稲田大を卒業した後、故・井上ひさし氏に師事していた。井上氏譲りの面白さと分かりやすさを発揮してくれることだろう。

 その一端は既に表れている。万太郎と坂本龍馬(ディーン・フジオカ・42)の結び付きをつくった。富太郎博士と龍馬の接点は確認されていない。

 この作品は視聴率を獲りにいっている。フレッシュな女優の主演が2作続いたが、既に人気も知名度も十分ある神木を主演に据えたことにも表れている。

 朝ドラの視聴率は全体的に下落傾向にあるが、その理由は単純明快だ。晩婚化や共稼ぎ世帯の増加により、メイン視聴者層である専業主婦が減る一方だからである。

 共働き世帯は1980年には614万世帯、85年には718万世帯だったが、2021年には1177万世帯へ激増している(総務省調べ)。テレビを観ている人が減っているのだから、視聴率が下がっても不思議ではない。

 視聴状況が昭和期、平成期とは違う中、「らんまん」はどこまで観てもらえるか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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