「舞いあがれ!」の視聴率はなぜ低かったのか
舞がパイロットになっていたら、大映ドラマ調
メッセージ性が一番強かったのは「舞いあがれ!」にほかならない。作者の桑原氏は放送開始前から「力の強弱に関係なく、誰でも居場所や役割はあることを伝えたい」としていたが、その通りの展開だった。
例えばサラリーマンとしては評価されなかったヒロイン・舞(福原)の夫・梅津貴司(赤楚衛二・29)は、短歌という活路を見出す。桑原氏は人にはそれぞれ合った道があると訴えた。
回り道の有用性も説いたが、最大のメッセージは最後になって分かった。最終回で舞を電動垂直離着陸機(空飛ぶクルマ)に搭乗させたことだ。
構成を見れば分かる通り、桑原氏は舞をパイロットにするつもりは最初からなかった。パイロットにしなかったことで、努力をしていれば最後は夢がかなえられることが訴えられた。
視聴率だけ考えたら、「パイロット物語」にしてしまい、飛行機業界の内幕を明るく描いたほうが良かっただろう。柏木弘明(目黒蓮・26)とのパイロット夫婦を誕生させれば、話題にもなった。だが、それではバブル期だった1980年代の大映ドラマ調になってしまう。桑原氏はそうしたくなかったのだ。
リーマン・ショック(2008年)を描いた理由も分かる。大きな犠牲を払いつつ、あの苦境を乗り越えた今だからこそ盛り込んだのだ。奇跡と言われる戦後の復興を成し遂げた日本人は、血を流しつつ、リーマン・ショックにも打ち勝った。ここに、コロナ禍などの困難にもきっと負けないという桑原氏のメッセージがあった。
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