「舞いあがれ!」の視聴率はなぜ低かったのか

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娯楽色が強い朝ドラのほうが視聴率を獲る

 考えさせる作品と考えさせない作品のどちらかが優れているわけではない。小説の純文学と大衆文学に上下がないのと一緒だ。

 ただし、視聴率には差が出る。朝ドラもそう。視聴率が世帯から個人に移行した2020年以降の全話平均視聴率を見てみたい。

〇2020年上期「エール」 主演・窪田正孝(34)、脚本・清水友佳子氏ら
個人11.0%、世帯20.1%

〇同下期「おちょやん」 主演・杉咲花(25)、脚本・八津弘幸氏(52)
個人9.6%、世帯17.4%

〇2021年上期「おかえりモネ」 主演・清原果耶(21)、脚本・安達奈緒子氏
個人9.0%、世帯16.3%

〇同下期「カムカムエヴリバディ」 主演・上白石萌音(25)ほか、脚本・藤本有紀氏(55)
個人9.6%、世帯17.1%

〇2022年上期「ちむどんどん」 主演・黒島結菜(26)、脚本・羽原大介氏(58)
個人8.9%、世帯15.8%

〇同下期「舞いあがれ!」 主演・福原遥(24)、脚本・桑原亮子氏ら
個人8.9%、世帯15.6%

 娯楽色が一番強かったのは「カムカム」に違いない。まず伏線をびっしりと張り巡らせた。また、通常の朝ドラには超常現象的な場面がほとんどないが、この作品は1人目のヒロインである安子の夫・雉眞稔(松村北斗・27)を、終戦の49年後に蘇らせた。

 なにより、安子(壮年期は森山良子・75)と娘で2番目のヒロイン・るい(深津絵里・50)が再会できるかどうかで最後までハラハラさせた。

 娯楽色が強かったこともあり、前作「おかえりモネ」で漸減した視聴率を回復させた。その「おかえり――」は東日本大震災から10年ということで、NHK東日本大震災プロジェクトの一環として制作された。

 震災時に宮城県気仙沼の島にある自宅にいられなかったことを悔い続けるヒロイン・永浦百音(清原果耶・21)と、祖母を捨てて逃げてしまったことが忘れられない妹・未知(蒔田彩珠・20)の相克と和解の物語だった。震災で全てを失い、立ち直れない漁師・及川新次(浅野忠信・49)の苦悩を生々しく描いたこともあり、考えさせられた。

 百音の気象予報士としての奮戦記や医師・菅波光太朗(坂口健太郎・31)とのラブストーリーもあったが、娯楽色の薄いこの内容で高視聴率は難しい。もっとも、安達氏は最初から納得の上で書いたはず。震災10年の作品にはふさわしかった。

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