栗山英樹監督、気配りの原点は「東海大臨時コーチ」 先輩指導者から得た「聞き流す力」も
選手個々の意見を聞いてから決断、即実行
「ねえ、チームリーダーは誰がいいと思う?」
昨年11月、侍ジャパンが巨人、日本ハムと強化試合をやっていたころのこと。選手が数人集まっていると、栗山英樹監督(61)がやってきて、選手一人ひとりに、こう聞いて回った。
その場にいた選手はほぼ全員、同じ答えを栗山監督に返した。
「わざわざ決めなくても~」
同監督は黙って何度もうなずいていたという。
「日本代表チームは各球団から集まってくる混合集団。それだけにチームをまとめるキャプテン(リーダー)の存在は大きな意味を持ちます。でも、栗山監督の凄いところは“リーダー不要”という選手の意見を即決で取り入れ、自ら考えていた案を撤回したことですね」(スポーツ紙記者)
選手個々に聞いてまわるという姿勢も珍しいが、その後は、「全員で戦っていく」と自らの言葉も変えて戦いの方向性を明確に示し、見事に世界一を成し遂げた。そんな栗山監督だが、あらためてその指導力の源泉はどこにあるのか、探ってみた。
WBCの準決勝、決勝を取材した米国人ライターがこう語る。
「侍ジャパンの栗山サンと、米代表監督のマーク・デローサ氏(48)はタイプが似ています。デローサ氏は現役時代、必ずしも名選手ではなく、『指導者経験ナシ』で代表監督になりました。ただ、現役引退後は野球解説者やスポーツ番組の司会、アマチュア競技の現地ルポなどにも真摯に取り組んできました。栗山サンも代表監督になる前は、コーチ経験ナシで(北海道日本ハム)ファイターズの監督になったんですよね?」
自らも「名選手ではなかった」と語る栗山監督だが、プロ生活6年で現役を引退した後、テレビ番組での甲子園レポーター、大学講師・教授、スポーツキャスターなどを務めてきた。今大会で活躍したラース・ヌートバー(25)が、現楽天の田中将大(34)や元日本ハムの斉藤佑樹氏(34)らが活躍したU-18大会でジャパンチームのバットボーイを務め、彼の自宅がチームのホームステイ先となったのは知られた話だが、実はそのとき、栗山監督もテレビ番組のレポーターとして現地入りしていた。
「ヌートバーとは今大会で”運命的な再会”を果たしたことになりますが、解説者時代には東海大学野球部の臨時コーチも務めています。同大出身の巨人・原辰徳監督は栗山氏にとって高校時代から憧れの存在でした。解説者になってから知己を得て、二人はとても気が合うようになりました。それがきっかけで臨時コーチを務めたといいます」(前出・記者)
当時を知る関係者によれば、栗山監督は技術や理論を押し付けるのではなく、
「まずはやってみろ。自分に合わないと分かったら、止めればいい。経験したことは自分の財産になる。無駄なことは一つもない」
と、学生たちに伝えていたそうだ。
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