世界戦中止で大ピンチ 新米プロモーター「亀田興毅」が明かす「頭のてっぺんが薄くなって、メシも喉を通らない」ほどの苦悩
世界戦はボクサーにとって人生の一大事
悲痛な覚悟を吐露するのも当然だろう。メインイベントのタイトルマッチが“白紙”となれば大会全体への悪影響は避けられない。だが、それ以上に亀田氏が案じていたのは、いきなり試合が宙に浮いてしまった挑戦者・重岡優大のことだった。実は、大会が開催される4月16日は重岡の誕生日でもあった。
「僕がファウンダーとして『3150FIGHT』を立ち上げたのは、何よりも、選手に最高の舞台を用意したいという思いからでした。その意味でも、世界戦に挑むはずだった優大のために何とか試合を成立させたいと考えています。ただ、優大だけは本当に可哀想で……。やはり、世界戦はボクサーにとって人生の一大事。このチャンスをものに出来るかどうかで人生が大きく変わってしまうので、命懸けでベルトを目指すわけです。優大もパンヤとの対戦を視野に、入念な対策を練ってスパーリングをこなし、激しいトレーニングを重ねてきました。しかも、いまはボクサーにとって最も大変な減量の真っ只中ですからね……。新たな対戦相手が見つかったとして、モチベーションを維持して戦うのは想像以上に難しい。それは僕自身が誰よりも理解しています」
トラブルは前回大会でも
実は、亀田氏の主催する「3150FIGHT」が“災難”に見舞われるのは初めてではない。
今年1月に開催された前回大会では、重岡優大の弟・銀次朗(23/ワタナベジム)が、IBF王者ダニエル・バラダレス(メキシコ)との世界タイトルマッチに挑んだ。銀次朗はバラダレスに対して優位に試合を進めたが、3ラウンドの途中で、王者の頭部が挑戦者のアゴを直撃。痛みをアピールするバラダレスは試合の続行不能を訴え続け、IBFの規定によりノーコンテスト(無効試合)となったのだ。銀次朗は悔し涙を流し、判定には疑問の声が上がった。
この大会後、会見に臨んだ亀田氏は次のように語っている。
「人間の眼だけで判断するのはなかなか難しい。どうしても難しい場合には、ビデオ判定っていうのは、当然、必要だと思うんですよ」
「これを機に、こういうことがあって、物事は進化していくわけなので。今回のケースを受けて、銀次朗選手の……、あの……」
言葉を詰まらせ、唇をきつく噛みしめる亀田氏。眉間にしわを寄せながらペットボトルの水を呑み込むと、大きく息を吐いてこう続けた。
「悔しい思いはあると思うんですけど……。これを次に繋げていけるように、何とか、ビデオ判定も含めてやっていきたいと思いますね。無駄にせんと次につなげていきたいな、と」
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