米国の「代理戦争」プランに背を向け始めた台湾世論 背景にウクライナ戦争での不信感
米国を「信じるか」どうかの世論調査は…
台湾民主文化教育財団が3月1日に公表した世論調査結果によれば、60%以上が「米国・中国どちらとも仲良くしなければならない」と回答した。「親米反中」の立場は20%強にとどまった。同財団は「『反中』の主張が弱まっている」としているが、ウクライナ戦争に米国が派兵しなかったことが影響しているという。
台湾民意基金会が2月21日に公表した世論調査結果によれば、「中国が台湾に侵攻した際、台湾防衛のために米国が派兵すると信じるか」という質問にノーと回答したのは全体の47%で、イエスの43%を上回っている。
自国の軍隊についても懐疑的だ。「中国が台湾に侵攻した場合、台湾軍の防衛力を信じるか」との問いに「信じない」が47%を超え、「信じる」の45%を上回った。いわゆる「不信派」が多数を占めたのは今回が初めてだ。
バイデン政権は台湾への武器の引き渡しを加速させる構えだが、ウクライナへの軍事支援で在庫が減り、台湾への武器の引き渡しが滞っている。
「米国製の武器を頼りにウクライナのように戦っても自国の軍隊だけでは勝ち目はなく、中国との対立は避けるべきだ」と多くの台湾国民が感じており、米国の代理戦争プランに背を向け始めているのが実情だ。
蔡氏が率いる民進党は昨秋の統一地方選挙で大敗したが、「中国を刺激しすぎて社会に混乱を招いた」との反発がその一因だと言われている。
蔡氏の今回の訪米は来年1月の次期総統選をにらんだものだが、政権奪還を狙う野党・国民党も中国との緊張緩和を望む世論を意識した動きに出ている。
国民党の馬英九・前総統は3月27日から台湾の総統経験者として初めて訪中した。
馬氏は3月30日、中国で台湾政策担当トップを務める宋濤氏と会談し、「(中台)両岸の人々は同じ中華民族に属している」と述べ、中国との融和姿勢を強調した。
民進党は「馬氏は2300万人の台湾人民の立場を代弁することはできない」と反発しているが、前述したとおり、民意は国民党に傾きつつある。
日本にとっても台湾海峡情勢は死活問題だが、最も求められているのは、揺れ動く台湾の民意を慎重に見極めることではないだろうか。
[2/2ページ]