マスターズ開幕 PGAツアーとリブゴルフが対立する異常事態の中、選手たちの意外な姿

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「ゴルフの祭典」として敬愛されるマスターズ・トーナメントがまもなく開幕する(現地時間4月6~9日)。1934年から始まり、今年で87回目の開催だが、PGAツアーとリブゴルフの対立という複雑な状況下で大会を迎えるのは、言うまでもなく史上初めてのことだ。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】

リブゴルフ選手の活躍を期待

 昨年6月にリブゴルフの初戦が開催されて以降、リブゴルフに出場した選手はPGAツアーのメンバー資格を停止され、古巣で戦うことはできなくなっていた。当初、リブゴルフ選手はメジャー4大会からも締め出されるという見方もされていたが、マスターズを主催するオーガスタ・ナショナルは「資格を満たしてさえいればリブゴルフ選手の出場を認める」ことを決めた。

 その結果、今年のマスターズ出場選手88名のうち18名がリブゴルフ選手、そのうち6名がマスターズ優勝経験者となっている。

 その6名の顔ぶれは、3勝のフィル・ミケルソンを筆頭に、2勝のバッバ・ワトソン、そしてセルヒオ・ガルシア、パトリック・リード、シャール・シュワルツェル、ダスティン・ジョンソンだ。

 他のリブゴルフ選手の顔ぶれを見ると、メジャー通算4勝と「メジャーに最も強い男」と呼ばれるブルックス・ケプカは、先週、リブゴルフの大会で勝利を収めたばかりですこぶる好調だ。昨年の全英オープン覇者であるキャメロン・スミスは、リブゴルフに移籍したため世界ランキングのポイントが稼げなくなっているにもかかわらず、現在6位だ。

 これだけ役者が揃っていると、リブゴルフ選手が今年のマスターズで活躍する可能性は十分高いと考えるのが自然だ。リブゴルフCEOのグレッグ・ノーマンは、その状況に期待を寄せすぎて興奮したのか、「リブゴルフ選手が優勝したら18番グリーンでリブ・パーティーだ」と狼煙を上げている。

 そうした言動から、オーガスタ・ナショナルに混乱や喧騒がもたらされそうにも思えてくるが、一見、挑発的に感じられる事象や出来事も、受け取り方次第では意味合いもニュアンスも変わってくる。

フランチャイズ・プロジェクトの影響

 一部の英国メディアは事前に、リブゴルフ選手の出場を認める意思を一早く表明したオーガスタ・ナショナルに感謝と敬意を表し、リブゴルフの選手たちはマスターズでチームのロゴ入りウエアを着用しないことを決めたと報じていた。

 しかし蓋を開けてみれば、リブゴルフ選手の大半は、それぞれが所属するチームのロゴマークが付されたシャツに身を包み、ロゴ入りキャップも被ってオーガスタ・ナショナルにやってきた。

 今年からリブゴルフでは、各チームが独自のロゴ入りグッズなどを販売し、収益化を図るフランチャイズ・プロジェクトが開始されており、ブライソン・デシャンボーは自身が所属するチーム「クラッシャーズGC」、ガルシアは「ファイヤーボールズGC」、ジョンソンは「4エイセズGC」のロゴが大きく付されたシャツを着ている。

 ジョンソンは「僕は4日間、チーム・ロゴの入ったシャツを着る」と言い切っているが、それはオーガスタ・ナショナルに対する非礼ではなく、「4エイセズ」のフランチャイズ事業を成功へ導きたいと考えているチーム・キャプテンとしての責任感からの言葉だと受け取れば、「なるほど」と頷ける。

 リブゴルフに移籍した結果、PGAツアー時代のアパレル契約を解消された選手も多く、そうした選手たちはリブゴルフのチーム・ロゴが入ったシャツ以外には「試合で着るものがない」という事情もある。

 それゆえ彼らは、マスターズでもリブゴルフのチーム・ロゴ入りシャツやキャップを着用しているのだなと見れば、それはそれで納得もできる。

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