次は商業用不動産がヤバい…米国“中小銀行の危機”が発端となって今後何が起きるか

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「リーマンショック級」を断言するつもりはないが…

 住宅用不動産市場にも暗い影が漂い始めている。

 住宅用不動産ローンの分野でも中小規模の銀行が主役を演じているからだ。

 融資残高のうち、中小規模の銀行は6割のシェアを誇り、米国全体の住宅ローンの7割を担う住宅ローン企業にも積極的に資金を提供している(3月28日付日本経済新聞)。

 住宅用不動産の分野でも中小規模の銀行の貸し渋りが始まるのは時間の問題だと思う。

 企業債務も心配だ。ジャンク債やレバレッジドローンなどの高リスクの借り入れは金利上昇に脆弱であるため、イングランド銀行は3月29日「次の金融危機は企業債務が引き金となる恐れがある」と警告を発している。

 グローバル化した世界経済では一国の危機がたちまち他国に波及してしまうのが常だ。

「リーマンショックのような金融危機が起きる」と断言するつもりはないが、米国の中小規模の銀行の危機が発端となって、欧米各国で深刻な資産デフレが生じ、バブル崩壊後の日本のように長期不況に陥る可能性は排除できないのではないだろうか。

 世界銀行も3月27日「2030年までの世界経済の成長率は約30年ぶりの低水準になる」との予測を発表している。

「欧米諸国で『アラブの春』のような政変が起きる」との憶測が既に流れている(3月22日付ZeroHedge)が、その上、スタグフレーションという悪夢が再来すれば、そのリスクは飛躍的に高まることだろう。残念ながら、日本も例外ではない。

 経済危機が政情不安を招いた1930年代の悲劇が繰り返されないことを祈るばかりだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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