「30年ぶりに症状がなくなった」 花粉症対策「最終兵器」の商品名は? 研究論文が効果を証明
炎症を強力に鎮める
ステロイド点鼻薬にこれほどの効き目があることをすでに把握している一般人はどれくらいいるのだろうか。「ナザールα」を販売している佐藤製薬は、
「今年2~3月は前年同月比約300%近い売り上げとなっております」
と言うから、その“実力”はじわじわと知れ渡りつつあるのかもしれない。
では、ステロイド点鼻薬はどのようなメカニズムで花粉症の症状を抑え込むのか。それを説明するためには、花粉症そのものの仕組みに触れておく必要がある。
医薬情報研究所/(株)SICの医薬情報部門の責任者で薬剤師の堀美智子さんが言う。
「花粉が鼻などから入り込み、異物だと認識されると、IgE抗体が作り出され、肥満細胞に付着します。そして、IgE抗体が付着した肥満細胞が増加し、一定レベルに達すると『感作(かんさ)』が成立。さらに花粉が入ってくるとIgE抗体と結びつき、肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されます。これらの物質が鼻水やくしゃみ、鼻づまりといった花粉症の症状を引き起こすのです」
そのヒスタミンが放出されるのを抑えたり、働きを抑制するのが抗ヒスタミン薬と呼ばれる飲み薬。先に紹介した会社員の証言に出てくる飲み薬はいずれも現在主流となっている第2世代抗ヒスタミン薬だ。一方のステロイド点鼻薬は、
「IgE抗体や肥満細胞の働きを抑えつつ、鼻の粘膜で起こる炎症を強力に鎮めたり、炎症を誘発する細胞が集まるのを防ぐなどの相乗的な作用によって、持続的に高い効果を発揮します」(佐藤製薬)
全身性の副作用が起こりにくい理由
「ナザールα」の有効成分が医療用と同量の0.1%になったのは2016年。
「それより前、ステロイド点鼻薬は“重症者に使う薬”と位置付けられていましたが、16年から『鼻アレルギー診療ガイドライン』で発症初期、軽症の段階でも使用が推奨されるようになりました」
と、先の堀さんが話す。
「花粉症では、鼻水やくしゃみなどの症状が出る前から炎症(最小持続炎症)が起こっており、それを抑えると花粉症の症状が出ることやひどくなることの予防につながることが分かってきました。ステロイド点鼻薬には、この最小持続炎症を抑制する効果があるのです。また、心配するような副作用の発現は少ないとされています」
また、「ナザールα」や「エージーアレルカットEXc」は、鼻粘膜などで効いた後は速やかに分解される「アンテドラッグ」のメカニズムにより、全身性の副作用は起こりにくい。一般的なステロイド点鼻薬に含まれる有効成分は3種ある。「ナザールα」に入っているベクロメタゾンプロピオン酸エステルの他、「ロートアルガードクリアノーズ」のフルニソリド、「フルナーゼ点鼻薬」のフルチカゾンプロピオン酸エステルだ。
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