選抜は山梨学院が初優勝も…スカウト陣はドラフト候補に対して“辛口評価”

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“ドラフト目玉候補”と呼ぶには物足りない

 最速148キロ左腕で、ドラフト1位候補の前田は、初戦の福井・敦賀気比戦で、9回を1失点(自責点0)、14奪三振の完投勝利を飾っている。しかし、ストレートは140キロを超えるボールは少なく、球威はいまひとつ。準決勝の報徳学園戦では、1点差に迫られた8回にリリーフとして登板するも、中学時代のチームメイトだった林純司に2点タイムリーを打たれ、逆転を許してしまう。

“広陵のボンズ”の異名を持つ真壁は、準々決勝の専大松戸(千葉)との試合で、2本のツーベースを放ち、持ち前の長打力を発揮した。だが、待望の甲子園第1号は不発に終わり、簡単に凡退する打席も少なくなかった。下級生の頃から活躍する選手だけに、相手投手のマークが厳しくなっている事情はあるにせよ、今秋の“ドラフト目玉候補”と呼ぶには、物足りなさを感じた。

 パ・リーグ球団スカウトは、前田や真壁だけはなく、大阪桐蔭、広陵、仙台育英のその他の選手にも、山梨学院を優勝に導いた林のように、大きく成長した選手が見当たらなかったと指摘する。

「大阪桐蔭や仙台育英クラスのチームになると、スカウティングに相当力を入れており、レギュラーの大半は、中学時代から有名な選手です。逆に言えば、完成度が高い分、高校で驚異的な成長、いわゆる“化ける選手”は、少ないですね。もちろん、中学時代から有名だった選手も成長はしています。ですけど、ある意味で“予想の範囲内”という感じです。今回の選抜はまさにそんな印象でした」

 ドラフト候補の実力を診断する側面では、今回の選抜は、スカウト陣にといって少々“期待外れ”といったところか。夏の甲子園に向けて、どんな選手が伸びてくるのか、筆者は今後も注視していきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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