選抜は山梨学院が初優勝も…スカウト陣はドラフト候補に対して“辛口評価”
優勝の原動力は“大化け”したエースの活躍
4月1日に行われた選抜高校野球の決勝は、山梨学院(山梨)が、報徳学園(兵庫)を7対3で破り、初優勝を飾った。山梨県勢として、春夏を通じて初めて甲子園を制する快挙を成し遂げた。大会前は、大阪桐蔭(大阪)、広陵(広島)、仙台育英(宮城)といった強豪校が優勝候補に挙がっていた一方で、山梨学院の前評判はそれほど高くなかった。【西尾典文/野球ライター】
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主要スポーツ6紙による山梨学院への評価をみると、日刊スポーツとサンケイスポーツ、中日スポーツは「Aランク」としたが、スポーツニッポンとスポーツ報知、デイリースポーツは「Bランク」にとどまっていた。大相撲の番付で例えるならば、山梨学院は“小結”くらいの立ち位置だ。
優勝の原動力は、何と言っても、3年生のエース・林謙吾が見せた大車輪の活躍である。1回戦から決勝までの全6試合に先発して4完投。防御率は1.57と1試合あたり2点も取られていない。さらに、WHIP(1イニングあたりの被安打+与四球)は0.83。この数字は、1.00を切れば先発投手として“超一流”と言われるもので、優勝投手に相応しい投球内容だった。
チーム同様、大会前の林に対する注目度も高くなかった。山梨学院が制した昨秋の関東大会では、林は背番号10で、エースではない。その後に行われた秋の明治神宮大会も、初戦の香川・英明戦で6回を投げて6失点と崩れて、マウンドを後にしている。球速も130キロ中盤にとどまっていた。昨秋の大会と選抜で、球速がほとんど変わっていない。にもかかわらず、全くの別人のような林のピッチングに、筆者は、改めて高校生が持つ成長力を感じさせられた。
林は、中学時代に軟式野球の強豪チーム、駿台学園中でプレーしている。硬式野球の中学生チームで鍛えた強豪校の投手と比べて、当然、硬式球を投げた経験が浅い。それゆえ、選抜で秘めた能力が開花して、“大化け”に繋がったといえるのではないか。
「今大会で突き抜けたという感じは……」
一方、前評判が高かったチームやドラフト候補はどうだったのか。スポーツ紙6紙が揃って「Aランク」と評価したチームが、冒頭で触れた大阪桐蔭、広陵、仙台育英だった。
仙台育英は、準々決勝まで勝ち進むが、延長10回タイブレークの末、報徳学園に5-4で惜しくも敗北を喫した。広陵は、準決勝で山梨学院に6-1で敗れた。終盤まで接戦を演じながら、最終回に5点を失って力尽きた。
一方、大阪桐蔭は、準決勝で報徳学園に序盤を5点リードしたが、終盤に試合をひっくり返されて、7-5と逆転負け。いずれのチームも最後まで勝ち切る強さがなかった。
「大阪桐蔭のサウスポー、前田悠伍、広陵のスラッガー・真鍋慧、仙台育英の投手3人(仁田陽翔、高橋煌稀、湯田統真)に注目して見ていました。それぞれ良い点もありましたが、昨年の秋に比べて、大きく変わったという印象はなかったです。特に、前田と真壁は、各球団の評価が高いと思いますが、今大会で突き抜けたという感じはしませんでしたね……。選抜に出場できなかった選手が、(夏に向けて)ここから伸びてくることが予想されるので、彼らと評価が逆転することも十分に考えられると思いますよ」
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