ワクチン、マイナカードの次は「コオロギ食」… 専門家は「まず救うべきは農家、酪農家」

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値段が付かず薬殺されるケースも

 コロナ禍で深刻な牛乳余りが発生し、政府が「牛乳を飲もう」と異例の呼び掛けをしたことを記憶している方も多かろう。無論、それで危機を脱したわけではなく、

「今も酪農家は深刻な状況のままです。北海道では牛乳の需要減に対応するため、乳牛を『廃用牛』として食肉用に出荷するよう促しましたが、供給が溢れて廃用牛価格の大幅な下落を招きました。また、乳雄子牛の価格暴落も重なり、値段が付かず薬殺されるケースも続出しています」

 と、鈴木氏は語る。

「本来であればまともな農業生産力を高め、国民に食料を供給できる態勢を整えて危機に耐えられるようにしなければならないのに、“牛乳搾るな”“牛殺せ”“米作るな”では、セルフ兵糧攻めをやっているようなものです。それでいてコオロギを食べようというのは本末転倒も甚だしく、正気の沙汰ではありません」

 国連食糧農業機関(FAO)が食料不足対策などとして昆虫食を推奨する報告書を公表したのは13年。

「稲作のための水田からメタンガスが発生したり、牛のゲップにメタンガスが多く含まれていたりすることから、現在の農業、畜産は地球温暖化を進める、と批判されることがあります。SDGsの観点から食料生産方法を変えなければならない、との声もありますが、その流れで安全性が確認されていない昆虫食を一つの目玉にするのがいいのかどうか、精査すべきです」(同)

 漢方に詳しい医師も言う。

「日本ではイナゴも蜂の子も食べます。しかし、コオロギは食べてきませんでした。食べてこなかったのには理由があります。微毒があるからです。昔から経験則で分かっているのです」

安全性を懸念する声

 中国やアジアの農業や食品問題に詳しい愛知大学名誉教授の高橋五郎氏によると、中国ではコオロギは珍味として食べられており、近年は、食料危機への対策としてコオロギを常食できないか、検討を始めた研究者もいるという。しかしその中国でも、安全性を懸念する声は上がっている。

「コオロギを人工飼育する場合、群れで飼うことになるわけですが、そうなるとストレスがたまりやすくなる。その群れを管理するために何か薬を使う必要があるのではないかという疑念があります」

 高橋氏はそう語る。

「加えて人工飼育のコオロギを食品化する過程で、どのような薬剤を使うのかという点も気になります。コオロギを殺す際に薬剤を使っているのか、粉末にして管理する段階で添加物を使っているのか。それが全く分からない。今、日本では主に東南アジアからのコオロギ粉末の輸入が増加していますが、それらがどのような薬品や添加物を使って作られているのかもよく分かっていません」

 食用コオロギの安全性について「敷島製パン」に聞いたところ、

「回答は差し控えさせていただきたく存じます」

 一方、無印良品ブランドを展開する「良品計画」は次のように回答した。

〈使用している食用コオロギ粉末については、パウダーへ加工後に殺菌(130℃15分の高圧蒸気殺菌)を行い安全を担保しております〉

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