【論点整理】放送法の解釈論争で立憲民主党の苦しい言い分 「高市早苗」捏造文書論争の論点3つを冷静に検討
具体性に乏しい立憲民主党の主張
が、受信料はまさにNHKの生命線でこれがなければ業務停止は必然。「番組内容に問題があるから放送できなくするぞ」という主張にも読める。現在、小西議員は野党所属だが、いずれは与党にという気概があるはず。その立場になった時にもこういう方針で放送局に物を言うとすれば、それこそ現場は委縮するのではという指摘はある。しかし小西議員はNHKに対する「集団訴訟なども検討したいと思います!」と意気軒昂だ(3月29日のツイート)。
ともあれ、(2)の放送法の解釈については、延々と立憲民主党が「高市大臣が解釈を変えた」と言い、高市大臣と総務省は「変えていません」と答えるという問答が断続的に今日に至るまで続いているということになる。
こうなると、「変えた」と言っている側が、その主張に信ぴょう性を持たせるために有効なのは、実例をあげることだろう。もっとも簡単なのは、政府が「一つの番組」を理由に業務停止をチラつかせたケースなどがあれば、「ほら見ろ!」と追及することが可能になる。
また、どこかの放送局から「高市大臣が解釈を変えて以降、現場が委縮するようになった」といった証言を取って来てもいいだろう。
報道に関わっているなら当たり前
しかしながら、今のところそれに該当する事例はない。小西氏の文書に出てきた、官邸側が不満を抱いていたとされる番組の一つ「サンデーモーニング」(TBS系)あたりは、自民党政権に対して厳しい論調が目立つが、彼らですら「圧力を感じた」などとは伝えていない。
「政治家に限らず、報道内容に抗議してくる人は常にいます。それ自体はもちろん愉快ではないし、場合によっては現場が委縮することもあるでしょう。でもそれは報道に関わっていれば当たり前のことですよね。誤報をしたのならともかく、本当のことを伝えているのなら問題はない。それが普通の考え方です。政治家に怒られてビビる人もいるでしょうけど、『ふざけんな』となって逆効果になることだってあります。
大体、現場の人間が放送法なんか気にしているとも思えません。
どちらかというと、現場が委縮するのは、訴訟沙汰じゃないですか。裁判になればとにかく面倒なので。その意味では小西議員がいろいろな局面で、法的措置をにおわせているのは有効でしょうがね」(テレビ局関係者)
ごく常識的な高市氏の話
なお、文書に登場する磯崎首相補佐官(当時)が問題視していたのは、「サンデーモーニング」だったが、高市氏が総務大臣時代に「政治的に公平ではない」番組の事例として語っていたのは、この種の情報番組やニュース番組の偏りではない。
「1つの番組でも、選挙期間中またはそれに近接する期間において、ことさらに特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間にわたり取り上げる特別番組を放送した場合のように、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合、また、国論を二分するような政治課題について、放送事業者が一方の政治的見解を取り上げず、ことさらに他の政治的見解のみを取り上げてそれを支持する内容を相当の時間にわたり繰り返す番組を放送した場合のように、番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められるといった極端な場合においては、やはりこれは政治的に公平であるということを確保しているとは認められない」(2016年年2月8日 衆議院予算委員会での高市大臣答弁)
つまり、選挙の時に特定の政党や候補者だけをクローズアップするような番組は良くない、といったごく常識的な話である。
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