【論点整理】意図的にカオスになっている? 「高市早苗」捏造文書論争の論点3つを冷静に検討
整理すれば論点は3つ
延々ともめているが、争点がグチャグチャなままでよくわからない、不毛な議論にフラストレーションを感じる――そんな向きも多いのではないだろうか。3月3日の小西洋之参議院議員(立憲民主党)の高市早苗経済安全保障担当大臣への質問に端を発した「捏造文書」騒動のことである。
グチャグチャになっているのは、戦略なのか、単に論点の整理能力に欠けているのかは不明であるが、長引いたほうが良いと立憲民主党側が考えても不思議はない。
一方で、さほど生活にも安全保障にも関係ない問題でコストがかけられていることは、支持政党を問わず国民にとって歓迎すべき事態ではないだろう。
双方が冷静に落ち着いて話し合えば、かなりの摩擦は避けられるはずなのだが、そういう気配もないので、ここでは論点を整理したうえで、現状を分析してみよう。
(全2回の1回目)
実際のところ、この件の論点は大きくわけて3つである。
(1)小西氏が持ち出した総務省の文書は「捏造」なのか。
(2)高市氏は総務大臣時代に、放送法の解釈を変えて政府が放送局に圧力をかけやすくしたのか。
(3)小西議員が文書を入手するプロセスに問題はないのか。
言葉の定義ができていない
これらについて、極秘文書や秘密情報ではなく、国会質疑や公の発言をもとに整理してみよう。
まず(1)について。
この議論がグチャグチャになっているのは、主に攻める側が言葉の定義を曖昧にしたまま突き進んでいるからだといえそうだ。高市氏をA、総務省をB、立憲民主党をCとして、それぞれの主張をまとめてみる。
「捏造」という強い言葉を使ったことの是非はおいておき、高市氏の発言や答弁の主旨をまとめると次の通り。
(A)「小西議員が持ち出した文書のうち、自分自身に関するペーパーには事実ではないことが書かれている。きわめて不正確だ。それを私は捏造だと考えている。
私はその内容について大臣時代に確認を求められたことがない。安倍総理と放送法の解釈について電話で話したこともない。万が一あったとして、なぜその通話内容を官僚が知っているのか。また、首相補佐官だった磯崎陽輔氏が放送法の解釈変更について、文書にあるように強い意見を言っていたことは、今回初めて聞いた。自分についてのペーパーはあとになって挿入されたものではないのか」
総務省の言ってきたこととは?
この件について総務省の言ってきたことはまとめると次のようになる。
(B)「文書そのものは総務省の職員が作ったものです。捏造はしていないとみんな言っています。ただ、書かれてあることが全部正確かといえば、そうとも言い切れないです」
文書に本当のことを書いたのならば、当然、「捏造した」と言うはずがない。しかし、仮に意図をもって不正確な情報を書いた職員がいたとして、今になって「ウソを書きました」と簡単に白状するはずがない。
従って、内部での聞き取りのみの段階で「捏造です」という答えが職員から返ってくる可能性はそもそも極めて低い。
一方で、正確性には自信がないということなので、(A)と(B)は矛盾せずに両立する。実際、高市氏は総務省の答弁を否定、批判はしていない。
これに対して、立憲民主党側(C)が主張しているのは大きくまとめると以下のようなことだった。
(C-1)「捏造だ」と言っていたけど総務省の行政文書だと総務省が認めているではないか。
(C-2)総務省は「捏造していない」と言っているではないか。
(C-3)高市氏は、文書にあるような内容の大臣レクはないと言っているが、総務省は「大臣レクはあった」と言っているではないか。
(C-4)高市氏は、当時の部下に聞いたら「(文書にあったようなやり取りは)絶対にない」と言っていたというが、総務省側は「絶対とは言っていない」と言っているではないか。
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