600万円で背を10センチ高くすることが可能…骨延長手術を600例行った整形外科医の告白
女性プロゲーマーが昨年2月、「身長170センチない男は人権ない」と発言してSNS上で大炎上したことがあった。実際、身長が低いことをコンプレックスに感じている男性は多い。ところが、身長を伸ばす画期的な手術があるという。“骨延長手術”と呼ばれるもので、この手術を17年間で約600例行った整形外科医の吉野宏一氏(55)に話を聞いた。
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【写真を見る】めちゃくちゃ痛そうな見た目… 骨延長に使用する専用器具
そもそも、骨延長手術とは、どのようなものなのか。
「足の骨は、膝から上が大腿骨、膝下には脛骨と腓骨があります。それらの骨のあるところの血管を避けて小さく切開し、ノミと槌を使って人工的に骨折させます」
と解説するのは、吉野氏。
「すると、自然治癒力によって骨折した部分に新しい骨(仮骨)が出来てきます。その仮骨は成熟していないので柔らかいため、足の外側に取り付けたリング状の器具によってゆっくり伸ばすことができます。1日当たり1ミリ、50日で5センチ伸ばします」
10センチ身長を伸ばす
大腿骨と脛骨、腓骨をそれぞれ骨折させて仮骨を伸ばしていけば、5センチずつで計10センチ身長を伸ばすことが可能だという。
この骨延長手術は、いつ頃考えだされたのか。
「1951年、ロシアのイリザロフ医師が、患者の足の外側にリング状の器具を取り付け、器具に装着しているネジを回して骨折した患部を圧迫することで骨がつきやすくなる治療をしていました。ところが、患者の1人が圧迫するネジを逆方向に回してしまったのです。イリザロフ氏がレントゲン写真でその患者の骨折部を見てみると、骨折した患部が伸びて、そこに仮骨が出来ているのを発見しました。これが骨延長術の始まりです」
日本では1990年頃から骨延長手術が行われるようになった。
「当時、私が勤務していた大阪赤十字病院附属大手前整肢学園で初めて骨延長手術が行われました。私はその手術に関わっていなかったので、担当医に手術のやり方を教えて欲しいと頼んだのですが、教えてくれませんでした。そこで骨延長手術を本格的にやっているアメリカのメリーランド州立大学に留学しました。大学の付属病院の整形外科のペーリー教授とハーゼンバーク教授に師事したのです。この2人は、ドバイなど世界各国の富豪から依頼されて、骨延長手術を行っていました」
吉野氏は帰国後、関西医科大学関連病院などを経て2006年、大阪で主に骨延長手術を行う「スカイ整形外科クリニック」を開設した。
「開設した当初は、小人症の患者がほとんどでした。ところが10年ほど前から、身長が低いことにコンプレックスがあって、何とかしたいと私の病院を訪れる患者が増えてきました。だいたい身長165センチくらいの男性が多かったですね。骨延長手術をすれば確実に170センチ以上になりますので、そこに魅力を感じたのでしょう。こういう方が年間で25人ほどいました」
通常、手術してから完治するまでに6カ月かかる。患者は2、3日おきに通院しなければならないので、治療期間中はクリニックの近くにマンションを借りる必要があるそうだ。料金は、手術や治療費、薬代などすべて含めて600万円。他に、足の外側に取り付ける器具や、骨を固定するため骨の内部に釘状の器具を入れる手術を行うと、1100万円になるという。
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