「あなたは痴漢。300万円払え!」アジアの外交官に示談金を請求した女性の正体【元公安警察官の証言】

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 日本の公安警察官は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。一昨年『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、痴漢扱いされたアジアの外交官について聞いた。

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 今回ご紹介するのは、勝丸氏が公安外事課で大使館や総領事館との連絡・調整を行う公館連絡担当班に所属していた時の話である。

「ある日、アジアの駐日大使館に勤務する外交官から相談を持ちかけられました」

 と語るのは、勝丸氏。

「彼は、大使館の同僚と渋谷で飲んで、二次会の居酒屋でかなり酔っ払ってしまったといいます。店を出て帰ろうと歩いていたら、すぐ右を歩いていた若い女性のお尻にうっかり右手が当たってしまったそうです。すると、女性は『この人痴漢!』と叫んだといいます」

反社と関係のある女性

 女性はすぐに「警察へ行って、被害届を出す」と言い出したという。

「外交官には妻がいるし、大使に知られたら面倒なことになると思ったそうです。女性から『警察行きましょう。嫌なら、名刺をください』と言われたので、勢いに押されて名刺を渡してしまった。相手が外交官だとわかると、なぜか『また連絡する』と言ってその場を去ったといいます」

 翌日、外交官の携帯電話に女性から連絡があった。

「女性は、『警察に被害届を出すわよ。マスコミにも話す。それが嫌だったら示談金を出しなさい』と言って、300万円を要求したのです」

 外交官がこんな大金は払えないと言うと、少しずつ金額は下がり、150万円になったという。

「外交官は、お金を払ってもまた要求されるのではないかと不安になり、同僚に相談。『勝丸氏なら上手く処理してくれる』と言われ、私のところに連絡して来たのです」

 勝丸氏は、外交官から女性の名前や携帯電話の番号などを聞き、独自に調査を始めた。

「反社と関係のある女性だと分かりました。右翼団体の男の妻か恋人だと思われます。外交官によると、彼女は、彼が飲んでいた居酒屋にいたそうです。おそらく初めから彼に狙いを定め、店を出た後、つけていたということでしょう。私に言わせれば、“当たり屋”ですね」

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