「日本語にそっくりでいて、どこか違う」 韓国語文法研究者・黒島規史の心をつかんで離さない魅力

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韓国語がおもしろいポイントとは

 熊本学園大学講師で、韓国語文法を専門に研究する黒島規史さん。中学時代、ブーム前夜だった韓国文化に触れた日から今日に至るまで、彼をとりこにし続ける“日本語にそっくりでいて、どこか違う”韓国語の魅力とは。

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 出会いは中学のときだった。高校のときに少しアプローチしたことはあるが、けんもほろろだった。大学に入ってから相手のことを深く知るにつれ、共通点が多いことがわかってきて、さらに好きになった。初めての出会いから20年。現在に至るまで韓国語との付き合いは続いている。

 私は韓国語文法を専門とする研究者である。中学時代、まだ韓流ブーム前夜の頃に韓国の歌や映画を通して韓国語に興味を持った。高校生のときに独学してみたものの一人ではよく理解できず、大学では韓国語を専攻しようと心に決めた。

 入学当時は研究者になろうとまで思っていなかったのだが、専門的に韓国語を勉強するうちに、どんどん韓国語への興味関心が増していった。日本語話者である私にとって、なんといっても面白いのは、韓国語が日本語にあまりにも似ているという点である。自分と共通点が多い相手により親近感を抱きやすいというマッチング原理を出すまでもなく、似た人に引かれるということは誰しも経験があるだろう。

挙げればきりがない共通点

 韓国語は日本語と音の面ではまったく似ていないものの、文をつくるシステムが非常に似ている。例えば「私は図書館で本を読みます」という文であれば、語順は日本語と同じなので、頭から直訳していけば自然な韓国語になる。文中の「は、で、を」のような助詞は韓国語にもあり、用法も似ている。さらに「読みます」のような丁寧語を含め、尊敬語などの敬語のシステムを持っている点も共通している。韓国語と日本語の共通点はこれだけにとどまらず、「図書館」のような漢語由来の語を大量に有していること、語彙だけでなく「どんぐりの背比べ」等のことわざにまで共通したものが多いことなど、枚挙にいとまがないほどである。

 韓国語と日本語は共通点も多いものの、両言語がフランス語とスペイン語のように親戚関係にあるかは不明であり、もちろん文法の面で相違点はある。例えば、韓国語は述語を否定形にするとき前から否定し、'not go' のようにむしろ英語と同じ語順になるところが、日本語との目立った違いである。

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