【舞いあがれ!最終回】最後に脚本家・桑原亮子さんのメッセージを紐解く

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コロナ禍だから生まれたヒロイン・舞

 NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」(全126話)が完結する。舞(福原遥・24、幼少期は浅田芭路・9)をヒロインとする物語は何を訴えたかったのか。脚本を担当した桑原亮子氏の言葉も踏まえて紐解きたい。

 桑原氏が朝ドラ脚本の執筆依頼を受けたころ、コロナが世界中で猛威を振るっていたという。そんな時代にふさわしいヒロインを桑原氏は考え、つくり上げたのが舞だった。元気で明るいだけのヒロインはコロナ禍下では足りない気がしたそうだ。逆境の中でも強く生きるヒロインにしたかったのだろう。

 だから、最初から元気だったわけではなく、祖母でばんばこと才津祥子(高畑淳子・68)ら周囲の人々に見守られながら、徐々にたくましくなっていく舞というキャラクターが生まれた。

 成長してからの舞は向かい風に吹かれるたび、より高く揚がる「ばらもん凧」のような存在になった。さまざまな試練に遭ったものの、そのたびに強くなった。

 家業のIWAKURAを襲ったリーマンショック(第56話、2008年)、就職が内定していた航空会社の入社延期(第57話、2009年)、お父ちゃん・岩倉浩太(高橋克典・58)の急死(第66話、同)。

 まだ続いた。内定辞退(第69話、同)とそれに伴う航空学校同期で恋人の柏木弘明(目黒蓮・26)との破局(第71話、同)、お兄ちゃん・悠人(横山裕・41)の金融商品取引法違反での有罪判決(第89話、2014年)――。

 舞が暗い表情をあまり見せないので忘れがちだったが、かなり険しい道のりだった。暗いトンネルの中にいるようなコロナ禍時代だからこそ、桑原氏は舞にいくつもの苦難を与えた。それを乗り越えていく姿を視聴者側に見せた。

舞が飛ぶことは既定路線

 一方、スタッフ側は放送前にこう説明していた。

「空を見上げて飛ぶことをあきらめないヒロインの物語を通して、明るい未来への希望を届けます」

 約束どおりになった。最後の最後になって、舞は浪速大の人力飛行機サークル「なにわバードマン」で2年先輩だった刈谷博文(高杉真宙・26)、玉本淳(細川岳・30)が開発した電動垂直離着陸機「空飛ぶクルマ」で飛翔する。

 ここで意味を持ってくるのは第19話で舞とサークルの1年先輩・由良冬子(吉谷彩子・31)が交わした会話だ。2人は女性パイロットの草分けであるアメリア・イアハートについて、声を弾ませながら語り合った。舞は旅客機のパイロットにはなれなかったが、電動垂直離着陸機での飛行においてはイアハートと同じくパイオニアとなった。

 第69話で舞の現在の伴侶である梅津貴司(赤楚衛二・29)が言った通りでもあった。

「トビウオは、水の中におってもトビウオや」

 パイロットは飛ばなくたってパイロットのまま。誰もがパイロットを目指すわけではないが、逆境に負けずに突き進んだら、それぞれの夢がかなう日が来る。それがメッセージの1つだった。

 桑原氏があらかじめ描いていた青写真に沿って物語は進行した。そもそもオープニングのCG映像で結末は予告されていた。

 紙飛行機が、ばらもん凧に変わり、それがプロペラ機になり、舞が乗るはずだった旅客機になって、最後は見慣れない飛行物体になる。電動垂直離着陸機にほかならない。舞自身が一時的に失速しても再び浮上する様子も表されている。オープニング映像は舞の半生。斬新な演出だった。

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