中国は再び“救世主”にはなれない…今後、世界経済のお荷物になる理由

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「世界経済は回復力が不十分だ。中国の発展が世界に新たなチャンスを提供する」

 習近平国家主席は3月26日、政府主催の国際経済フォーラムにこのような祝辞を寄せた。ゼロコロナ政策などで低迷した経済を成長軌道に乗せ、国際的な影響力を高める狙いがあると評されている。

 同フォーラムには国際通貨基金(IMF)のゲオルギエフ専務理事も参加した。ゲオルギエフ氏はシリコンバレー銀行など米中堅銀行2行の経営破綻に端を発した世界的な信用不安について「明らかに金融安定へのリスクが高まっている」と警戒感を露わにした。

 中国政府も3月23日、リーマンショックを念頭に「2008年の金融危機を繰り返さないように」と米国政府に苦言を呈していた。

 世界経済に暗雲が立ちこめる中、ゲオルギエフ氏は「(中国経済は)個人消費によって力強く回復している」と高く評価した。

 リーマンショック後、中国政府が約80兆円に上る大規模な景気対策を実施したおかげで世界経済は回復したというのが定説だ。

 中国は再び「救世主」になることができるのだろうか。

「今年失業するホワイトカラーは47%超」の試算

 中国ではゼロコロナ政策が解除され、ホテルやレストランなどに客足が戻りつつあるが、V字回復の期待は裏切られている。

 深刻なのは自動車市場だ。今年1~2月の新車販売台数は前年比15.2%減だった。市場で激化している価格競争に危機感を覚えた中国汽車工業協会は3月22日「業界の安定的な発展が損なわれる行為は控えるべきだ」と加盟企業などに訴えかけた。

 自動車など耐久消費財の需要低迷のせいで1~2月の中国のドル建ての輸入額は前年に比べて10.2%減少した。

 消費者を慎重にさせている要因は、不動産市場の低迷、公務員給与や医療補助などを削減する政府の対応、雇用不安などだ(3月16日付ロイター)。

 中国の新規住宅価格は16ヶ月連続で下落し、ようやく1月に下げ止まったようだが、楽観できない状況が続いている。

 不動産市況の急激な悪化で地方政府の財政は火の車だ。主要な収入源である土地売却収入は今年1~2月、前年比29%減となり、地方政府が抱える債務の合計は9兆ドル強に膨らんでいる(3月17日付ロイター)。資金難にあえいでいる地方政府にとって残された手段は大幅な支出削減しかない。

 雇用不安もますます深刻になっている。民間調査会社によれば、今年失業する可能性を恐れているホワイトカラーの割合は47%超に達している有様だ。

 政府が個別の補助を行う可能性も低いとされており、ゲオルギエフ氏の見立てとは異なり、中国の個人消費の見通しは暗いと言わざるを得ない。

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