「疲労というより睡眠の時間がずれている……」大谷翔平を悩ます時差ボケの恐怖 脳卒中や心筋梗塞のリスクも

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寿命を縮める時差ボケ

 海外出張でなぜか身体がだるく、会議に全く集中できなかった──これくらいなら軽症だと言える。重症となると、消化不良が起き、寝込んでしまうということもあるようだ。

 興味深いことに、「東回りのほうが時差ボケは悪化する」ことが医学的に証明されているという。つまり、日本からアメリカに移動するほうが時差ボケはひどい。

「東回りの時差ボケが悪化するのは、体内時計が原因です。人間は体内時計を早めるのは苦手で、遅くするほうが対応できます。東への移動は太陽を追いかけるので、“強制的に早起きさせられる”時差ボケになるわけです。西への移動は太陽から遠ざかるので、“強制的に夜更かしさせられる”時差ボケになります。早起きより夜更かしのほうが人間は得意なので、日本人なら渡米時の時差ボケは重く、帰国時の時差ボケは軽いという傾向が生じるのです」(同・坪田医師)

 高齢になるほど時差ボケは健康に害を及ぼす。場合によっては寿命を縮めるというから驚きだ。

「長時間労働、特に月に100時間以上の残業は、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めることが分かっています。そして度重なる時差ボケも、同様の悪影響を与えることが判明しています。特に定年間近の商社マンや外交官は、時差ボケが頻発するような働き方だと寿命を縮めてしまうため、細心の注意を払う必要があります」(同・坪田医師)

社会的時差ボケ

 自分は海外出張なんてしないから大丈夫──これは間違った考え方だという。実は日本国内で生活していても時差ボケは発生する。「社会的時差ボケ」だ。

「1週間のうち平日の5日間と休日の2日間の就寝時間に3時間以上のズレが生じると、飛行機で海外に向かった時と同じ時差ボケが発生し、これを『社会的時差ボケ』と呼びます。海外渡航時に発生する時差ボケより社会的時差ボケのほうが頻度が高く、健康に与える悪影響も深刻です」(同・坪田医師)

 平日は家に仕事を持ち帰るので、どうしても夜更かししてしまう。せめて休日の前日くらいは早寝して、翌日は早朝からゴルフに行って身体を動かそう──。

 いかにも健康に気を使っているという印象だが、社会的時差ボケという観点からは逆効果になってしまうわけだ。

 3月の1カ月間で、大谷は何度も時差ボケを体験させられた。まさに健康状態が心配になってしまうが、坪田医師は「乗り越える可能性は高いと思います」と言う。

「定年間近の商社マンや外交官だと心身に与える負担は相当なものがあります。WBCの日程を原因とする大谷さんへの負担も大きいとはいえ、若い人は時差ボケになりにくく、なっても症状が軽症化する傾向があるのです」(同・坪田医師)

 時差ボケは「日の光を浴びて身体を動かす」ことで治ることも多い。マイアミでは初日から練習を行った選手もいたが、理にかなっていたわけだ。

「特に若い人の場合、時差ボケを何度も経験すると対応力が上がります。生まれて初めての時差ボケは重症化する可能性がありますが、大リーグの選手である大谷さんは日常的に時差ボケを経験しています。そのため一種の“耐性”が生じるのです」(同・坪田医師)

 アメリカは広大だ。ニューヨークからハワイまで6時間の時差がある。今回のWBCでは、大谷やパドレスのダルビッシュ有(36)が他の選手に時差ボケ対策をアドバイスしていた。まさに2人は“耐性から獲得したノウハウ”を持ち、それを伝授したのだろう。

 週刊新潮の3月30日号には特集「『大谷ジャパン』鮮烈なる残光」が掲載された。

 その中に「時差ボケでも『大谷翔平』の『寝る力』」という一節があり、大谷がどれほど睡眠の「量と質」に気を配っているかが紹介されている。寝具メーカー「西川」が取材に応じたのだ。

《「当社では、眠る際のコンディションを最適にできるよう、オーダーメイドの枕やマットレスなどを提供しています。2年に一度、体型や筋肉量を測定し、身体にぴったりフィットする寝具を提供しているのです」》

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