「疲労というより睡眠の時間がずれている……」大谷翔平を悩ます時差ボケの恐怖 脳卒中や心筋梗塞のリスクも

スポーツ 野球

  • ブックマーク

マイアミの苦労

 日本とマイアミの時差は13時間。現地時間の午前3時は日本時間だと午後4時になる。

 日本時間のままの大谷の体内時計は夕方の感覚だったはずだ。普段なら、あと数時間もすれば夕食で、さらに数時間が経過すると就寝していたに違いない。だが、マイアミは午前3時。日の出前というよりは未明とか払暁という言葉が浮かぶ時間帯だ。

 要するに日本代表は夜中に日本を発ち、まだ夜中のマイアミに降り立ったことになる。

 そもそも普段通りの生活をしていても、午前3時に起きるのは大変だ。だが日本代表は長時間のフライトによる心身への負担があり、なおかつ、体内時計のズレも襲いかかった。マイアミの初日は12時間が経過しても、まだ午後3時だ。

 大谷をはじめとする日本代表の選手たちは、日本時間で考えると夜中から夕方まで機内に滞在させられ、なおかつ、夕方からずっと徹夜を強いられたような状況だったわけだ。これがどれだけ辛いかは、未経験者でも簡単に想像がつくだろう。

 日本代表も時差ボケ対策には力を入れ、「マイアミで迎える初めての晩は、ぐっすりと寝る」ことを目標としてきた。

 だが、それも“言うは易く行うは難し”だったはずだ。機内でも安眠しなければならないが、13時間のフライト中、ずっと眠れるはずもない。

 逆に機内で寝すぎると、肝心のマイアミで寝られなくなってしまう。17日は休養日だったが、昼寝も夜の安眠を考えればリスクだったはずだ。

アメリカ国内でも時差ボケ

 3月21日(日本時間22日)、日本代表は決勝戦でアメリカ代表を下し、世界一に輝いた。選手は22日朝(同・同日夜)、自分たちの所属チームに帰るため移動を始めた。

 日本でプレーする選手も再び時差ボケに襲われたが、アメリカにとどまる大リーガーの大谷も例外ではなかった。

 記事の冒頭で紹介した通り、エンゼルスはアリゾナ州テンピでキャンプを行っていた。マイアミからの直線距離は約3200キロ。これは東京から北京の約2100キロ、香港の約2700キロを超え、ウランバートルの約3000キロに匹敵する。

 飛行機の直行便を使っても約5時間が必要で、マイアミとテンピの時差は3時間。大谷が「疲労というより睡眠の時間がずれているだるさ」を感じるのは無理もない。

 富山県の雨晴クリニックで院長を務め、日本睡眠学会に所属する坪田聡医師は、睡眠専門医として20年以上の臨床経験を持つ。改めて時差ボケとは何か、解説をお願いした。

「数時間の時差がある地域に飛行機で急速に移動すると、体の生活リズムが狂ってしまうことを時差ボケと呼びます。症状は人によって様々ですが、時差ボケが起きてしまうと間違いなく滞在地でのパフォーマンスに影響が出てしまいます」

次ページ:寿命を縮める時差ボケ

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。