ガーシー逮捕に立ちはだかる障壁とは? 綾野剛は「法廷で堂々と証言する」
UAEのお国柄
“ガーシー逮捕”への壁の一つに挙げられるのが、UAEのお国柄だ。
日本エネルギー経済研究所中東研究センター研究員で、自身も昨年10月まで6年間にわたってドバイで暮らしてきたという佐藤佳奈氏は、
「日本はUAEから大量の石油を輸入しており、これまで良好な関係を築いてきました。ただ、UAEは基本的に他国の内政には干渉しないというスタンスを取っており、犯罪人の引き渡し条約も結んでいない日本の捜査に積極的に協力してくれる保証はないのです」
この内政不干渉は、実はあるスジの人たちには有名。
「日本に限らず、世界中の政治犯などが亡命先としてドバイを選んでいる。さらに、マレーシアやシンガポールのビザ要件が厳しくなってきたため、お尋ね者になった日本人がUAEに流れてくるという現象も起こっています」(同)
UAEにとってみれば、数多(あまた)いる犯罪者の中からわざわざガーシー氏だけを選んで送還する理由もないというわけだ。
UAE女性と結婚すれば…
また、ガーシー氏は、UAEで「ゴールデンビザ」を取得したことを明かしているが、このビザも曲者(くせもの)。
「UAEには普通のビザの他にグリーンビザ、ゴールデンビザと3種類のビザが存在するのですが、ゴールデンビザだと10年間の滞在が認められる。UAE国内で生活する限りパスポートを確認されることはありませんから、理屈の上ではパスポートが失効しても10年間は生活できることになります」(同)
ガーシー氏が日本の司直の手を逃れる術は黄金のビザだけではない。
国際ジャーナリストの山田敏弘氏いわく、
「例えば、昨年7月にドバイでガーシー氏と会談して話題になったタイのタクシン元首相は、2006年のクーデターで国を追われ、現在はタイのパスポートが失効している。ただ、彼は他に10カ国以上のパスポートを取得し、各国を転々としながら亡命生活を送っています。世界には一定の納税額や投資額を満たせば永住権を取得できる国があり、お金さえあれば新たなパスポートを手に入れることも事実上可能なのです」
新たなパスポートという点では、こんなウルトラCも。イスラム研究者の宮田律氏によれば、
「例えばUAEの女性と結婚すれば、ガーシー氏はUAEのパスポートを取得することができる。そうなれば、UAEから別の国に逃亡することも可能になってしまいます」
ガーシー氏の強気は単なる虚勢ではなかったのだ。
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