中国中央銀行総裁人事を外した日経新聞 「部長自らリスクを取るのは立派」の声も
経済部長の筆は勢いが余った?
拓殖大学海外事情研究所の富坂聰教授が、総裁人事の背景を説明する。
「現職の易綱総裁について各国メディアが『退任する』と見込んでいたのは事実です。というのも、易氏は昨秋の共産党大会で中央委員など党の上位から外れ、降格という扱いになった。さらに、65歳という、閣僚級からは外れるのが常道と見られてきた年齢でもあり、ふつうに考えれば退任だろうと想定されたわけです」
しかし、と富坂氏。
「それだけで閣僚級ポストを離れると言い切れるほどの根拠とはなりえませんし、過去に例外はいくらでもあります。だからこそ、各紙は『見込み』という書き方をしていたのでしょう」
たしかに、当該の記事を除けば、日経も「退く公算が大きい」などと、いかにも新聞らしい無難な報じ方をしている。それを思えば、経済部長の筆は勢いが余ってしまったのか、はたまた、よほどの確信があったのか。いずれにせよ、読者に誤った情報を伝えることになってしまったのは否めない。
折しも日経は、日銀の次期総裁人事をめぐって、大きな騒動を起こしたばかり。
「2月6日付の日経に『新総裁について政府は雨宮正佳副総裁に打診をした』というスクープが出て、市場も円安・株高の反応を見せた。しかし、直後に磯崎仁彦官房副長官が否定した上、『総裁に植田和男氏が内定』と一斉に報じられたのは、そのわずか4日後のことでした」(全国紙記者)
「リスクを取るのは立派」
日銀騒動に続く、中国中央銀行総裁人事をめぐっての“誤報疑惑”――。日経の広報室に見解を問うと、
「結果として2月3日付朝刊の当該記事には誤りがあり、ご指摘は真摯に受け止めさせていただきます」
さる日経経済部OBは、
「経済部はたしかに花形で、他の部が準備した大ネタでさえ1面から弾いてしまうことも多かったため、“経済部帝国主義”なんて言われていたことも。特に部長は編集局長、社長へとつながる『出世コース』。むしろ、リスクを取って部長自ら筆を執るのは立派だと言ってあげたいところです」